2008.10.24
スタッフのプライベートタイム
スロートラベル
10月のある日、ふと列車に乗りたくなった。
晴れの日も、雨の日も、風の日も、定刻に走る列車が好きだ。
ここちよい定時性がたまらない。
8時過ぎに豊橋を出て、名鉄電車とすれ違い、
豊川の鉄橋を渡り、北へとカーブする。
豊川を過ぎると、沿線の風景が変化していく。
住宅やアパート、頭を垂れた稲穂、稲刈りを終えた田んぼ、
すすき、柿の木、茶畑、山林…
そして、遠くから山が車窓の端に飛び込んできた。
トンネルを抜けると、水面の透明な川、茶畑が見えてきた。
駅名の表示を見ると、浜松市天竜区であった。
10時に中部天竜に着いた。ここで6分ほど小休止。
さっき、隣の乗客が話していた、レールパークが、線路を隔てて現れた。
往年の車両が一堂に集まっていた。年甲斐もなくはしゃいでしまった。
そんな車両に別れを告げると、川、発電所、学校、製材所が目の前を通り過ぎていき、
長い長いトンネルへ入って行った。
坂を登り、トンネルを出ると、コバルトブルーのダム湖が
木々の間から姿を見せていた。
山と木々に囲まれたプラットホーム、人の気配は全くない。
すると、突然観光客がシャッターを切り始めた。
3県(愛知・静岡・長野)の県境を示す木製の標識が立っていた。
もうすぐ長野県だ。
県境のトンネルを抜けて暫く経つと、駅舎の傍らに観光バスが1台停まっていた。
振り向くとその訳がわかった。
ここは天竜川ライン下りの船着場だった。
下船する観光客を待っていたのだ。無人になった船を
船頭がひとりで漕いでいた。
乗客はじっとそれを見つめていた。
やがて川とは離れ、山に入り、トンネルを越えると、終点の天竜峡に着いた。
12時前だった。駅から踏切を渡り、橋へ向かって歩くと、
さっきのライン下りの乗船場を見つけた。
しかし、僕には重大な目的があった。
ここまで走破した駅は50。残りはあと45。
全線走破を目指していたのだ。
乗船場から踵を返し、駅へと戻って、次の飯田行の列車に乗った。
到着してから30分後のことだった。
今度は終点で1時間待ち。
それから、岡谷まで2時間半、アルプスの山々を遠くに眺めて、
列車に揺られていた。
16時到着。200キロのスロートラベルが終了。
陽は西に傾き、冷たい風が吹いていた。
他の乗客に混じって、プラットホームで帰りの列車を待った。
BY 391M