2020.04.01
経営者の声
株式会社 YASUNAGA 安長一彦 社長
自動車部品の試作を事業とする株式会社 YASUNAGAさん。
3年前に移転したばかりの工場を訪問すると、まず目に飛び込んでくるのは1,300㎡以上ある
広大な樹木園。屋内を含め、敷地内には他にもたくさんの植物が育成しています。
鉄工所になぜこんなに広い庭園をつくられたのでしょうか。
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世間には、野暮ったい、汚い鉄工所がある。
備品が整理整頓されておらず、床にまで散乱していて、従業員が今にもけがをしそうな工場もある。
そういう工場と整然としている工場、どちらも同じ品質の製品を作るなら、
お客さんはどっちを選ぶ?
工場は言葉を語らなくても、訪れた人に自社の姿を映し出す。
工場の見た目は、品質への信頼や安心感につながる。
かっこいい鉄工所があってもいいじゃない。
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見た目以外で品質をわかってもらうには、しゃべること。
「こういうパーツを頼まれたけど、パーツをこうすればこう良くなるんじゃない?」
「この点のこういう部分にこんな技術や工夫を入れてたら、昨日徹夜しちゃってさー」
自分を開示することで、お客さんにモノの価値をわかってもらえる。
お客さんのために手を尽くしているのに、なぜ値段を下げないといけないか。
それは、こちらがどれだけ手を尽くしたか、伝わっていないから。
こだわりが伝われば、お金に変わる。だから、しゃべればお金になる。
昔はしゃべるのが苦手だったけどね。
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こちらが言葉を尽くすように、仕入先からも本当のことを言ってほしいと思っている。
「原価いくら、こちらの利益はいくら。あわせていくらで提供させて下さい」と。
そう提示されれば相手の事情もわかるので、話ができる。
YASUNAGAでは従業員が取引先と打ち合わせをし、取引するかどうかも従業員が判断している。
仕入先がたくさんあると従業員が選択に迷い、本業以外の時間で考える時間をとられる。
その時間を省く意味でも、値段の内訳を明らかにしないような胡散くさいところと取引するのはいやだし、儲けが少ない取引の時は対応が遅くなる会社とも付き合いたくない。
そして、人はよどんだ方や楽な方に流れやすいからこそ、自分たちの周りを善い人に囲んでもらう。
すると、善い人が集まってくる。この工場を建てる前のこの土地は竹藪だったんだけど、一緒に竹を切ってくれる人であったり、紹介料もなしで善い人を紹介してくれる人であったりね。
お互いに隠し事のない商売は従業員が成長する。
しっかりできる環境におくと、しっかりした人が育つ。
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私は、経営者は私でなくてもいい、と思っている。
そして、従業員は、私に使われているのではなく、自分の意志で動いてほしい。
担当が自ら判断し、考え、動く。
そのために会社の情報は各人の給料に至るまでオープンにしているし、従業員は裁量を持っている。
その考えを示す例が、代表社員制。
代表社員とは、営業部長 兼 工場部長。
代表社員が対策を自分で考えて、工場内の業務指示を出す。
寺尾会計が毎月訪問する際にも、会計報告を聞く代表社員の横に社長がいる。
この代表社員は3ヶ月ごとに変わる。
すると、各々の従業員が全体を知り、全体を見て、全体を理解した上で、仕事に取り組める。
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世間では分業化が進んでいるが、分業をすると自分の工程以外の仕事がわからなくなる。
すると、仕事に対する礼節と敬意が失われ、不良品ができる。
たとえば、設計の仕事を知らなければ、
「設計者はいつも、パソコンの前に座って煙草をぷっかー。遊んどるじゃないか」と思えてしまう。
お互いの業務を知っていれば、相手や仕事を尊ぶことができる。
だから、YASUNAGAの従業員は、受注から設計・製造、納品まで、どの仕事も一人ひとりが対応できる。
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自律して動いていく中で、会計を見ながら作業ができればベストな働きができる。
ひとつの仕事が終わったら、各人がその原価を計算する。
そのために、新人は1つ1つの部品の単価を覚えていくことから始める。
そうしないと、部品の扱いが荒くなり、ぽいぽい捨てることになる。
原価がわかるからベストを目指せる。経済的に作れる。
原価がわからないと、納期に間に合えばいい、となってしまう。
担当の平田さんも、前任の加藤さんも、従業員がわかるまで教えてくれるのがいい。
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従業員が育つので事業を育てる。
人が育たないのに事業をしていて楽しいか。
欠点のある人が成長したら、それが経営者の証。
従業員の家族にも喜ばれる会社でありたい。自社も周りもプラスになる、
お父さんがヤスナガさんで働いていてよかったと思われる、そういう会社でありたい。
草木の世話をしていると、徹夜々々で働いていた亡き両親を思い出す。
私が退任した後に従業員が草木の世話をして「社長がやっていたなー」と思い出してくれればいいんじゃないかな。
ご協力ありがとうございました。
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