2020.10.23
経営支援資料館
中小企業こそ、残業を減らしたい! 第4回 残業時間削減の事例 その1 ~就労時間を柔軟にする~
ライター
吉田典史
就労時間を柔軟にする
中小企業で残業時間を減らす場合、
「早く帰ろう」と社員たちに呼びかけたところで大きくは変わりません。
それは、連載第2回で紹介したとおり、残業を減らすことができない構造や仕組みがあるためです。
今回は残業を減らすために、 仕事を効率よく進めていくことができる仕組みを取り上げます。
その1つが、「時差出勤」です。
時差出勤
時差出勤とは、社員各自が出社時間を家事や育児、介護などプライベートの状況に合わせ、
選ぶことができる制度です。
全員を一律に同じ時間に出社させるのではなく、
それぞれの働き手の考えや私生活に配慮し、各自の責任で勤務時間を決めます。
その意味で、「柔軟な働き方」とも言えるでしょう。
各自の納得感や安心感、責任感、使命感、モチベーションを高め、
仕事により一層に集中するようにしています。
時差出勤の事例
次に挙げたのは、首都圏の自治体の正規職員を対象とした「時差出勤」です。
・標準の勤務時間は、午前8時20分~午後5時5分。
全職員500人程のうち、7割はこの就労時間を選んでいます。
この他に、次の4つの勤務時間を設けました。
- 午前7時30分~午後4時15分
- 午前8時~午後4時45分
- 午前9時~午後5時45分
- 午前9時30分~午後6時15分
全職員が5つの勤務時間から、1つを選びます。
配属部署や職種、役職、在籍年数など関係なく、選ぶことができようにしました。
対象を広げることで、できるだけ多くの職員が働きやすいようにしています。
大切なことは、組織で取り組むこと。
全職員が、前月20日までに上司に申請します。基本的に、上司は認めます。
各職員は、1か月ごとに変更することができます。
なお、上司は通常は、申請時に各勤務時間を選ぶ理由を本人に問いません。
理由を育児や介護などに限ることもしていないのです。
各職員の考えやライフスタイルなどを可能な限り尊重し、
働きやすい環境を整備するためです。
納得感や安心感、責任感、使命感を高めることを大切にしています。
導入から3年を経て、職員の意識や業務の進め方に変化が現れているようです。
特に「各職員の時間管理の意識が高まり、業務の生産性が高くなった」という声を
管理職などから聞くようです。
なお、フレックスタイム制度は導入していません。
フレックスタイム制度を導入すると、
人事部は「特に窓口業務の部署や小人数の部署などで特定の時間に職員の数が減り、
市民サービスに支障が生じかねない可能性がある」と判断しているためです。
制度導入後は、各部署での職員間の情報や意識の共有化に一層の力を入れています。
その1つが朝礼で、全員がそろう午前9時30分以降に始めます。
業務の課題や問題などについて職員間の情報共有を徹底させ、
市民サービスの向上を図るのです。
デジタル化を進めることで、組織全体の情報共有も進めています。
全職員がパソコンの画面を通じて閲覧するグループウェアでは、
部署ごとに個々の職員の業務の1日や1週間、1か月のスケジュールなどを記録しています。
今回の事例は、就労時間を各自の責任で選ぶことができるようにするものです。
参考にすべきは、それぞれの職員の意識をいかに高めるか、といった問題意識です。