2020.12.03
経営支援資料館
中小企業こそ、残業を減らしたい! 第8回 まとめ (最終回)
ライター
吉田典史
中小企業においての残業の問題
今回は、最終回となります。
おさらいの意味を込めて、中小企業においての残業の問題を挙げます。
AからGまでの詳細は、連載第1回をご覧ください。
A 残業代の増加=人件費の増加
B 残業代の未払い
C 労働生産性が上がらない
D 職場や社内の雰囲気が悪くなる
E 離職率が高くなる
F 仕組みができない
G 採用力が低下する
心得るべきは、残業は様々な形で経営に悪影響を及ぼすことです。
そして、個々の社員の力で解決はできないこと。
全社、各部署の人事やマネジメントなどの仕組みや構造を変えない限り、 残業を大幅に減らすことは不可能に近いのです。
組織の問題にするために…
全社、各部署といった組織の問題にするためには、
少なくとも次のことをする必要があります。
- 全社、全部署、全員の残業についての現状認識の共有
- 社員の意識(アンケート)調査などで、課題や問題点を把握
- 社員の仕事の量や残業時間などの「見える化」
- 解決策を見つけ、実行する
- 社長や役員、各部署の責任者(主に部課長)が削減に向けてメッセージを繰り返し伝える
- 解決策などの改善を繰り返す
- 残業時間始め、労働時間を正確に記録する。特に出社、退社、休憩。
- 役員、管理職を中心に残業時間を把握する
- 可能な限り、一般職(非管理職)も同一部署の社員の残業時間を把握する
- 少なくとも2∼3か月に1度は、残業削減について全社、各部署で話し合う
問題の真相
①から⑩までを完全に実行するのは、中小企業においては相当に難しいはずです。
特定の社員に仕事が集中し、他の社員との間に情報や意識の差が大きいためです。
社内に、2つの会社があるかのような印象を受ける場合もあります。
仕事が多いグループとそうでないグループが、それぞれ別の組織に見えるのです。
このような会社は仕事が多いグループが頑張っているから、会社や部署が動いていきます。
仕事が少ないグループの社員は得てして定着率が低く、次々と辞めていく傾向があります。
こういう構造的な問題は、多くの中小企業に見られます。
ところが、各社の社内で大きな関心事にはあまりなりません。
仕事が多いグループが頑張り、仕事をなんとか消化するために、
皮肉なことに問題を見えないようにしてしまっているのです。
しかし、このままでは会社全体の残業が大幅に減ることはないと思われます。
定着率と働きやすい環境
この問題を克服するためには
まずは、仕事の少ないグループの社員の定着率を高めることです。
この社員たちが経験を積み、技能を高める環境を整備する必要があります。
仕事が多いグループとそうでないグループの差は、
仕事の経験や知識、ノウハウ、技能の差とも言えるためです。
再認識するべきは、
個々の社員が納得して、安心して働きやすい環境を作ることです。
たとえば、就労時間を柔軟にしたり、在宅勤務ができるようにしてみたら
いかがでしょうか。
つまりは、「働き方改革」を試みるのです。
残業が多い会社は、十分には働き方改革ができていない可能性があります。
定着率が高くならず、社員の出入りが激しく、
特定の社員に仕事が集中する構造が残り続けます。
実は、この構造があると会社が安定して成長することができません。
残業の問題は、経営の危機でもあるのです。
放置しておいて、本当によいのでしょうか。
これを機に、ぜひ、連載第1回から第8回までを繰り返しご覧になってください。