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コラム

2021.06.13

中小企業の事業承継

中小企業の事業承継:自社株式と事業承継税制

企業の経営者の悩みの1つに「事業承継」があります。

『自社株式や事業で使っている土地といった事業用財産を円滑に引継ぐ
それも事業承継を考える際の検討のポイントの一つです。

事業用財産をすべて後継者に相続してほしい場合、遺言を作成することが考えられます。

ただ、
遺言で「事業用財産はすべて相続人Aに相続させる」と記載するだけでは
事業承継対策として不十分な場合があります。

例えば、相続人が子2人(うち1人が後継者)、
現経営者の財産が100(うち事業用財産が80)であるとします。

 | 相続人A(後継者)
 | 相続人B (後継者以外)
 
 | 事業用財産   80
 | 事業用財産以外 20

遺言を『事業用財産はすべて相続人Aに相続させ、その他の財産はすべて相続人Bに相続する』と作成したとき、遺言どおりに分割を行えば、後継者が80、その他の相続人が20の財産を取得することになります。

 | 相続人A(後継者)   事業用財産すべて   80
 | 相続人B(後継者以外)  事業用財産以外すべて 20

この場合の問題点は2つあります。

①後継者でない相続人Bは相続できる財産が遺留分25(100×1/2×1/2)に満たないことになります。
 ですから、5(25-20)については相続人Bが遺留分減殺額請求をする可能性があります。

②後継者である相続人Aは、事業用財産を取得しても、相続税の納税資金が不足する可能性があります。

これでは、現経営者亡き後の企業経営がスムーズに回らなくなる可能性もあります。

この問題を解決するために、遺留分に関する民法の特例が定められています。

この特例により、生前贈与された自社株式等について
遺留分から除外するといった対策をとることができます。

ところが、この特例を利用するために自社株式を生前贈与しようと思うと
株式の評価額によっては、多額の贈与税が課税されることになります。

贈与税の負担がなければ早期に株式や経営権を委譲できるのに・・・。

そうした事業承継上の支障を取り除くことを支援するための税制が
事業承継税制」です。

この税制の適用を受けることで
令和9年までに贈与された株式については贈与税の負担がなくなります

この税制の特例措置の適用を受けるには
令和5年3月31日までに一定の計画を都道府県庁に提出する必要があります
(令和4年度税制改正にて令和6年3月31日までに延長されました)

先代・後継者・事業関係者との綿密な意志共有や
自社株式の評価額を下げる対策の検討もしていこうと思うと、
事業承継制度利用の検討や計画の策定を始めるには、今年がチャンスです。

今一度、自社の未来と事業承継について考える良い機会ではないでしょうか。

中小企業庁 経営承継円滑化法による支援
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_enkatsu.htm

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