2021.12.23
経営支援資料館
中小企業における障害者雇用の効果的な進め方のポイント 第1回:障害者に対する認識と障害者雇用を取りまく現状
障害者雇用ドットコム
代表 松井優子
障害者に対する認識
近年、障害者の【害】という漢字にマイナスのイメージを感じる方に配慮して
「障がい者」という表記を見る機会が増えています。
しかし、このコラムの中では、障害の【害】の字をあえてひらがなにせず、漢字で書いています。
これは、障害に対する考え方として、
私は【社会モデル】の考え方を大切にしているからです。
社会モデルでは、障害を障害という課題に捉えるのは、
社会によってつくられた問題であり、
その多くは社会的環境によってつくり出されたものであるという考え方をします。
対して、比較されるのが【医学モデル】という考え方です。
こちらは、障害を個人の問題として捉えて、
専門職による個別的な治療という形で
医療などの援助を必要とするという考え方をします。
例えば、ある駅にエレベーターが設置されていないような場面で、
車椅子ユーザーや、思うように体が動かせない人がいた場合に
医学モデルと、社会モデルの考え方から見てみると、次のような考え方になります。
【社会モデルの考え方】
障害は、個人の問題ではなく、環境の作用によって生じる社会問題と捉える。
つまり、車椅子ユーザーが不便を感じたり、移動ができないのは、
エレベーターがないためであり、
設置されていれば、障害を感じる必要はない。
【医学モデルの考え方】
個人の障害によって制限がある。それを取り除くのにどうしたらよいのかを考える。
例えば、リハビリして歩けるようにする、松葉杖を使って移動できるようにする。
もちろん、すべての状況でこの考え方が反映されるわけではありませんが、
「障害」と書くことで、その意味が障害者に対するものではなく、
それを受け止める社会や環境、考え方の「害」を意識するものになってほしいと
考えています。
コロナ禍においても障害者法定雇用率があがった背景
現在の障害者雇用率は2.3%です。
2021年3月に雇用率が0.1%引き上げられました。
新型コロナ禍においても障害者雇用率が引き上げられた背景には、次の要因があります。
・障害者雇用に対する社会的な認知が広がったこと
・国がおこなってきた障害者雇用の推進が成果を出してきたこと
・企業ごとのニーズに合わせた支援ができていること
確かに、近年の障害者雇用の施策は、かなり手厚くなっています。
例えば、
障害者の雇用経験や雇用ノウハウが不足している「障害者雇用が0人の企業」を対象に
企業ごとの支援計画を作成し、準備段階から採用後の定着支援まで一貫した支援などを
おこなっています。
中小企業に求められるこれからの障害者雇用
障害者雇用は全体としては進んでいるものの、企業別規模から見た場合、
中小企業になるほど障害者雇用が難しくなっている状況が見えてきます。
実雇用率の平均は、2.15%ですが、従業員1,000人以上の企業は2.36%であるのに対して、
従業員45.5~100人未満で1.74%、従業員100~300人未満で 1.99%となっています。
また、法定雇用率達成企業の割合も中小企業が低くなっています。
大企業と同じような障害者雇用は難しいかもしれませんが、
企業に合った障害者雇用を進めることはできます。
中小企業にあった障害者雇用を進めるためには何をしていけばよいのかについて、
これから順番にお伝えしていきます。
そのためには障害者雇用の基本を知ることが大切です。
次回は、障害者雇用の制度について説明していきます。