2022.07.13
中小企業の事業承継
相続に伴う会社と税金 ~死亡退職金と弔慰金~
この2~3年で会社経営者の方からの相続に関するご相談が増えています。
後継者の方が成熟されてきたことや、経営者の方がいよいよ高齢になってきたことが
その理由であるかと推察します。
そこで経営者の相続に伴う税金について、今回は「死亡退職金」と「弔慰金」をご紹介します。
死亡退職金は役員等が死亡したことにより役員等のご遺族へ支給される退職金です。
会社の側からみると、死亡退職金は特別損失であり、法人税法上の損金となります。
ですから、死亡退職金を支給することで、その事業年度の法人所得は減額されます。
また、その事業年度の株式評価額も引下げられることとなります。
遺族の側からみると、死亡退職金には相続税が課税されます。
ただし、500万円×法定相続人の数までの金額は非課税となります。
ですから、相続税の負担なく金銭を取得できるため、納税資金や生活費の確保につながります。
なお、死亡に伴わない退職金の場合、会社の経理は同様ですが、
受取った方には退職所得として所得税が課税されます。
ただし、40万円×勤続年数 または 800万円+70万円×(勤続年数-20)までの金額であれば
課税される金額はありません。(勤続5年超の場合)
弔慰金は故人を弔い遺族を慰める気持ちを表す金銭です。
会社の側からみると、弔慰金は福利厚生費であり、法人税法上の損金となります。
ですから、弔慰金を支給することで、その事業年度の法人所得は減額されます。
また、その事業年度の株式評価額も引下げられることとなります。
遺族の側からみると、弔慰金には税金が課税されません。
ですから、税金の負担なく金銭を取得することができることとなります。
ただし、原則として普通給与×6か月分を超える部分は、
死亡退職金であるものとして取り扱われます。(業務上の死亡でない場合)
このように支給する側にも受取る側にも税務メリットのある死亡退職金や弔慰金は
過大であると、税務署に否認されてしまいます。
死亡退職金の適正な金額の判断基準としては“功績倍率方式”が多く用いられます。
これは、最終報酬月額×勤続年数×功績倍率で求めます。
この適正な金額を超える部分については、法人税の計算上、損金として認められません。
死亡退職金を支給したり、弔慰金を非課税で受取るためには
亡くなられた経営者の方が直前まで勤務し、報酬等が支払われていることが必要です。
後継者に経営を任せた後も、引き続き会社に関与するかどうか検討することも
相続対策の一つといえます。