2022.07.23
中小企業の事業承継
相続に伴う会社と税金~会社への貸付金~
この2~3年で会社経営者の方からの相続に関するご相談が増えています。
後継者の方が成熟されてきたことや、経営者の方がいよいよ高齢になってきたことが
その理由であるかと推察します。
そこで経営者の相続に関して、今回は「会社への貸付金」をご紹介します。
中小企業の貸借対照表でよくみられる勘定の一つが、経営者からの借入金です。
借入金の返済は、法人税上の経費となりませんが、
現金を支出することとなるため 返済を留保しているケースも見られます。
しかし、
経営者の相続が発生した場合、会社への貸付金(経営者からの借入金)は相続財産となります。
たとえ、回収できない可能性がある貸付金であっても相続税の課税対象です。
ですから、相続開始までに貸付金を整理しておくことが相続対策の一つとなります。
整理する方法として、今回は次の3つをご紹介します。
① 会社への貸付金の返済を受ける
② 会社への貸付金を放棄する
③ 会社への貸付金を贈与する
①
貸付金の返済は、会社の資金繰りを重視しながら行います。
相続のために会社経営に負担を強いては、本末転倒ともなり得ます。
相続税・所得税・法人税の実効税率のバランスを見つつ、役員報酬を引き下げて貸付金の返済資金とすることも有用です。
②
貸付金の放棄は、会社の利益状況も勘案して行います。
貸付金の放棄がなされると、法人側は債務免除益が計上され、法人税が課されます。
ですから、繰越欠損金がある場合や、赤字となる事業年度を見計らって行う場合が多いです。
また、債務免除されることで純資産が増え、株式価値が増加することにより
他の株主へのみなし贈与となる場合もあるため注意しなければなりません。
③
会社への貸付金を後継者や親族へ贈与するというのも相続税対策として有効です。
法人側の課税に影響がないのもメリットの一つです。
贈与税の非課税枠を活用して毎年贈与したいけれど、現預金を贈与するとすぐに使ってしまいそう。 という場合にも良いかもしれません。
会社と経営者間の借入金・貸付金の有無は、
ビジネスとプライベートの資金入出が曖昧なのかもと見られ、 金融機関からの融資に悪影響を与えることもあります。
相続対策以外の面からも、
経営者からの借入金がある場合には整理を検討されてはいかがでしょうか。