2022.10.13
中小企業の事業承継
中小企業の事業承継:遺言と事業用財産
中小企業の経営者の平均年齢は毎年上昇しています。
東京商工リサーチによれば、2021年における平均年齢は62.77歳であり、
70代以上の経営者の割合は全体の32.7%であったとのことです。
当事務所の顧問先様についても事業承継や相続について
本格的なご相談を受ける機会やお声がけをする会社さんが増えてまいりました。
自らの人生をかけて経営し、雇用する従業員のある会社の行先を案じられ、
相続対策に積極的な姿勢を示される経営者さんが多いと感じております。
さて、相続対策は目的に応じて3つに分類されると言われます。
①争族対策
②相続税対策(節税)
③納税資金対策
どれも行っておきたい対策ですが、
その検討に本腰を入れる前にひとまず遺言書の作成をおすすめすることがあります。
その遺言書には全ての財産を網羅する必要はありません。
会社の株式や事業用財産を後継者等に遺贈する旨の記載だけあれば
まずは会社の資産を相続による散逸から避けることができます。
また、後継者が推定相続人でない場合においても、
会社の資産を次期経営者に承継することができます。
「遺言」というお話をすると、
「下手に遺言を書くと遺留分を侵害するかもしれない」と心配される方もあります。
令和元年7月1日以降に開始する相続については、
遺言書に記載のある遺産分割が遺留分を侵害していても
その遺言書に記載のある遺産そのものについては他の相続人に請求されることがなくなりました。
遺留分を請求された場合には、遺留分を侵害している部分の金銭を支払うこととなりますが、
事業用財産の保全を第一に遺言書の作成をしていただけるようになったと思います。
また、遺言書は何度でも書き直せるため、
実際に対策の計画が進んだ段階で改めて遺言書を作成することができます。
そして、受遺者全員の合意があれば遺言はなかったものとすることもできます。
相続はいつ起こるかわかりません。経営者の年齢や健康状態は関係ありません。
まずはやってみる、会社に関する財産だけでもいいから書いてみるというお気持ちで
最初の1歩を踏み出してみませんか。
東京商工リサーチ 社長の平均年齢
https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20220425_01.html