2023.02.23
寺尾会計の税務的な毎日
相続した外貨預金から生じた為替差益
今回も所得税にかかる話題をご紹介します。
外貨預金を、日本円で受取した場合、
外貨を購入したときの取得価額との差額(為替差益)について所得税が課されます。
以下の例を用いて、確認していきましょう。
① 預金預入れ 10万ドル×@90円=900万円(円貨でドルを購入)
② 日本円で受取 10万ドル×@110円=1100万円(円転して払戻し)
為替差益・為替差損は雑所得となります。
外貨預金は金銭債権ですから、900万円については必要経費とはなりません。
元本部分(900万円)を差引いた200万円が雑収入の総収入金額となります。
具体的にみると、次の金額について所得税の課税対象となります。
総収入金額 (@110円 -@90円 )×10万ドル=200万円
必要経費 0円
雑所得の金額 200万円-0円=200万円
では、被相続人が預入れた外貨預金を相続した後に、相続人が日本円で受取した場合、
所得税額はどのように計算されるでしょうか。
① 預金預入れ 10万ドル×@90円=900万円(円貨でドルを購入)
② 相続の開始 10万ドル×@100円=1000万円(相続税評価額)
③ 日本円で受取 10万ドル×@110円=1100万円(円転して払戻し)
結果としては、次の金額について所得税の課税対象となります。
総収入金額 (@110円 -@90円 )×10万ドル=200万円
必要経費 0円
雑所得の金額 200万円-0円=200万円
相続、遺贈または贈与により雑所得等の起因となる資産を取得した場合には、
相続人、受遺者又は受贈者が引続きその資産を所有していたものとみなされます(所法67の4)。
つまり、被相続人が預入れた際の換価額が 相続人の雑所得の計算に使われる、
言い換えれば、相続時の時価(相続税評価額)は、雑所得の計算上、無関係であるということです。
仮に相続人の所得が③-②で計算されると、②-①の期間の所得について課税する機会がなくなってしまいます。
そう考えると総収入金額の計算が③-①であることの合点が行くのではないでしょうか。
経済が複雑化していくとともに、個人が保有する財産も多様化しているのを実感しています。
新しい資産に係る課税関係を誤ることがないように、税制の趣旨や条文、判例を確認しながら
間違いのない申告をしてまいります。