2024.11.03
寺尾会計の税務的な毎日
定額減税のある年末調整の流れとポイント
みなさま、年末調整のご準備は進んでいらっしゃいますでしょうか。
今年は定額減税の対応のため、例年の計算に一つ計算過程が加わります。
そこで今回は、本年分の年調事務の流れとポイントについて確認したいと思います。
① ~11月 各種申告書の従業員への配布、記載された申告書の領かり
② ~12月 年税額の計算と過不足額の精算
③ ~1月10日(金)徴収税額を納付 ※納期特例の場合は1/20(月)
④ ~1月31日(金)源泉徴収票等の作成・提出
定額減税に伴う事務は、主に②年税額の計算に関係します。
とはいえ、②年税額の計算についても、年調所得税額の計算までは例年どおりです。
本年分のみ加わる計算過程は、年調所得税額を計算した後に「年調減税額(定額減税額)を控除する」ことです。
また、④源泉徴収票等の作成について、A及びB(該当する場合はC・Dも)を摘要に記載します。
A源泉徴収時 所得税 減税控除済 額 ××円
年末調整により実際に控除した定額減税額の金額を記載します。
参考HP(国税庁 過不足額の精算の設例)2ページ目を参照ください。
B控除外額 ××円
控除しきれなかった定額減税の金額を記載します。
なお、月次減税により定額減税額がすべて控除された場合には
「控除外額 0円」と記載します。
C非 控除対象配偶者 減税有
配偶者控除(所得控除)を受けない配偶者の定額減税額を
従業員の給与から控除した場合に記載します。
具体的には、配偶者の所得が48万円以下で、従業員ご自身の所得が1,000万円超である方が
該当します。
D減税有 ○○○○(同配)
上記Cの配偶者が障害者である場合に記載します。
○○○○には、配偶者の氏名が入ります。
なお、退職等により年末調整をしない場合は、定額減税に関する摘要欄の記載は不要です。
年末調整に係る定額減税で注意すべき点には次のようなものがあります。
【親族の実際の所得が48万円を超えた】
月次減税で控除されている定額減税額は6月1日時点で計算されていますので
年間の所得金額が48万円以下になる見込みだった扶養親族の実際の所得金額が48万円超となる場合には
月次減税事務と年調減税額での定額減税額は異なることとなります。
よって、従業員から提出される扶養控除申告書をよく確認する必要があります。
【親族が年の中途に亡くなった】
配偶者や親族を定額減税額の計算に含めるどうかは、通常、12月31日現在の現況で判定しますが
配偶者や親族が6月1日以降に亡くなった場合は、亡くなった日の現況で、定額減税の計算に含めるか否かを判定します。
つまり、所得金額が年80万円の見込みで扶養控除申告書に記載のなかった親族が6月10日に亡くなり
実際の所得金額が40万円だった場合、定額減税の計算に含めることとなります。
【定額減税と扶養控除の分離 不可】
夫婦共働き世帯のように、同じ世帯に所得者が2人以上いる場合、扶養親族は夫婦のどちらで控除対象としてもかまいません。
ただし、年調減税額の計算に含める対象と扶養控除の対象とを分けることはできません。
つまり、年調減税額は父の所得から控除し、扶養控除は母の所得から控除する、ということはできません。
年税額の計算や摘要への記載事項そのものは複雑ではありません。
しかし、従業員一人一人について年中の減税控除額と、年税額の計算が必要ですので
ヌケやモレがないよう、例年より早めに年末調整事務に着手しましょう。
国税庁 令和6年分 年末調整についてのお知らせ
https://www.nta.go.jp/users/gensen/nencho/pdf/02.pdf
国税庁 令和6年分 年末調整チェック表
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/nencho2024/pdf/26.pdf
国税庁 過不足額の精算の設例
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/nencho2024/pdf/23.pdf