2020.05.25
経営支援資料館
コロナウィルス感染拡大防止に「在宅勤務」! 第3回 在宅勤務制度導入の仕方
ライター 吉田典史
今回は在宅勤務制度をスムーズに導入し、運用している会社を紹介します。
私が2018年に取材した中堅の自動車部品メーカー(正社員数500人)で、導入の時期は2016年でした。
●いきさつとスタート時
2016年5月に「働き方改革推進室(部員4人で、通常の部署との兼務)」を発足。
ここが中心となり、トライアルを繰り返すなどして段階的に取り組みました。
まず、対象を本社勤務の育児・介護中の社員約15人に絞ります。
女性社員を中心に「在宅で子育てや介護をしながら働きたい」という声があったためです。
就労場所は、自宅やカフェ、出張先のオフィス、要介護者の自宅や施設、会社が契約する企業が運営するサテライトオフィスなど、「常識的な範囲」としました。
就労時間の制限は、設けませんでした。社員の生活スタイルに合わせるために、例えば、午前中は自宅で、午後は会社で仕事ができるようにしました。
●ヒアリング(聞き取り調査)
働き方改革推進室は育児・介護中の社員15人やその上司や同僚25人のヒアリングを続けました。
特に確認したのは、テレワークした日の時間の使い方など。
その後、17年8月に、在宅勤務制度を「在宅勤務細則」として定めました。
主な内容は、次のとおりです。
- 就労時間や場所、情報漏えいの防止やパソコン内のデータのセキュリティ対策など。
- 希望者は上司の承認を得たうえで、「実施申請書」を人事部に毎月1回提出。
- 有効期間は当該年度(年度更新)で、通常は更新しています。
申請するうえでの主な条件は、次の通りです。
- 「上司への申請は前日までが好ましいが、当日も可能」
- 「実施日は始業時、終業時にメールで上司に連絡」
- 「勤怠管理は、パソコンのログオン、ログオフの記録で行う」
- 「自宅などで当日の仕事を一人でする力を兼ね備えている」
- 「情報漏えいやセキュリティ対策のルール(在宅勤務細則)を厳守する」
- 「制度を利用できる日は、原則として1か月の就労日の半分以内
(この範囲内ならば、通勤手当は従来通りの額を支給)」 - 「使用するパソコンは、会社が貸与したもののみ」
- 「パソコンの社外への持ち出しは、上司に毎月申請し、認められること」
- 「上司などの連絡は、原則として会社貸与のスマホなどを使う」 など。
●説明会開催で、正式にスタート
制度を導入する3ヵ月前から、全社員を対象に説明会を計5回開催しました。
1回につき1時間程。
説明で特に力を入れたのは、就労時間や場所、情報漏えいの防止やセキュリティ対策。
説明会のやりとりは録画し、社内イントラネットで観ることができるようにしています。
新卒や中途で入社した社員には、入社1か月以内に行う研修で視聴させています。
2018年に正式にスタートしました。
この会社は、制度利用の対象者を絞り込み、丁寧なヒアリングを行い、制度やルールを作る姿勢が明確です。
そのうえで、申請の手順やルールを定めるので
スムーズに導入し、運用ができているのだと思われます。
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