2020.11.23
経営支援資料館
中小企業こそ、残業を減らしたい! 第7回 残業時間削減の事例 その4 ~段階的に取り組む~
ライター
吉田典史
段階的に取り組む
今回紹介する事例のポイントは、段階的な取り組みです。
第3回で挙げた通り、「完ぺきな結論」を追い求めるのではなく、
その時点での「仮の結論」をとりあえず出すことが大切です。
これまで長い間、残業時間を減らすことができなかったのですから、
完ぺきなものを考え出すのは無理があるためです。
今回紹介する事例は、社員数120人程のコンサルティング会社で、創業25年です。
段階的な取り組み①:定時以降の会議禁止
まず、10年前に、定時(18時)以降の会議を原則禁止にしました。
会議をする場合は、事前に総務部へ届けをします。
そのほとんどがよほどの理由がない限り、却下となります。
段階的な取り組み②:受付終了時間の設定
また、他部署への業務依頼や顧客や取引先など外部からの問い合わせの受付は、
17時30分までとしました。
段階的な取り組み③:労働時間管理についての意識定着
社長や役員、人事部の管理職が役員会、管理職、研修で
労働時間の管理、残業の削減について
繰り返し説明をするようにしました。
社内イントラネットや社内報にも、その考えを載せます。
段階的な取り組み④:残業の事前申請
5年前からは、残業の事前申請を徹底させています。
残業をする場合、上司に理由や時間を含めて伝え、承認を受けることが必要です。
この際、上司は次のことを確認します。
「今日中に、その仕事を終える必要があるのか否か。明日以降では、なぜ、ダメなのか」
回答次第では、認めない場合もあります。
実際は10件の申請のうち、認めるのは2件程のようです。
人事部は毎月、各部署、全社員の残業時間を役員も参加する管理職会議で公開し、
今後の対応などを話し合います。
その後、全社員が見る社内イントラネットに各部署、全社員の残業時間を載せます。
段階的な取り組み⑤:プレミアムノー残業デー制度
4年前から、「プレミアムノー残業デー制度」を導入しました。
17時まで勤務すれば、18時前に退勤しても18時まで勤務したとみなすものです。
女性の管理職が、「1時間早く退社できるので、家事や育児を始め、趣味や自己啓発などに
取り組むことが可能になる」と私の取材に答えていました。
段階的な取り組み⑥:労働時間の意識づけ
3年前から、新入社員や管理職への意識づけも行っています。
社長や役員、人事部の管理職が新入社員や新任管理職の研修で、
労働時間の管理、残業の削減や抑止の考え方やあり方について教えています。
ほぼ同時期に、新卒や中途の採用試験の会社説明会や面談、面接で
役員、人事部の管理職が労働時間の管理、残業の削減についての会社の現状や考えを
説明をしています。
段階的な取り組みによる改善
この会社では、
10年前において35時間前後だった月平均残業が、昨年には13時間となりました。
これらの取り組みは、数年ごとに実施しています。
その期間で現状を見つめ直し、問題点や課題を浮き彫りにして、
次の施策を考え、取り組むようにしているのです。
大切にしているのは、その時点での最善の策に取り組むこと。
議論を繰り返して、結局、何もしない状態になるのを避けているのだそうです。
中小企業の場合、一気に様々な取り組みはできません。
まずは、実現可能なものから1つずつ試みるのがよいでしょう。
改革は、小さな改善の繰り返しで実現できます。