2023.11.03
業務効率を上げる! 年末調整編
国外居住親族がある場合の扶養控除等[所得税]
11月に入り、年末調整に関する書類をお客様へお配りする時期となりました。
そこで今回は、令和5年度に一部改正された、
雇用している者(給与所得者)の養っている親族が国外に居住している場合の扶養控除等について
お伝えします。
所得税の計算上、所得金額から控除される14種類の所得控除のうち
次の4つについては、その親族が非居住者である場合において適用を受けるときには
一定の書類を給与支払者又は税務署へ提出又は提示することが必要です。
・扶養控除
・配偶者控除
・配偶者特別控除
・障害者控除
一定の書類とは、次の2つをいいます。
・親族関係書類
・送金関係書類
さらに、令和5年分からは、
国外居住親族が30歳以上70歳未満の場合において扶養控除を適用するための書類に改正がなされ、
親族の状況に応じ、上記2つに加えて次のいずれかの書類も必要となりました。
・留学ビザ等書類
・送金関係書類(計38万円以上)
労働力の中核であると見込まれる年齢層の親族ついては、添付書類が厳しくなった形です。
なお、寡婦控除やひとり親控除については、扶養する家族が国外居住親族であっても
上記書類の添付要件はありませんので、注意が必要です。
国外居住親族については、
その所得や扶養の事実確認や実態把握が税務署にとって容易であるとはいえない状況にあり
扶養親族等の数を過大に申告するケースが散見されたため、
平成28年以降、国外居住親族に対する扶養控除等の適用を受ける際には
一定の書類の添付が義務付けられています。
そんな中、令和5年3月14日に
国税不服審判所において、送金関係書類の提出についての裁決がなされました。
この裁決のケースでは、
親族の居住国への海外送金に制限があるため送金関係書類の提出が困難であるという事情までありましたが、たとえそのような事情があったとしても、また、実際に国外居住親族を扶養している事実があったとしても、
上記の書類が提出等されていない限り、扶養控除をはじめとする上記4つの所得控除を受けることはできないとされました。
「国外居住親族についての扶養控除等は原則としてできない。
ただし、一定の書類の添付があったときのみ特例として適用できる。」
と捉えることもできるような厳格な判断であるように思います。
従業員が実際に扶養している家族があることを知っている雇用者にとって、
書類がそろえられない事のみをもって上記の所得控除の適用をせずに年末調整を行うことは
非常に心苦しいことと思います。
年末までまだ若干の時間があります。対象となる従業員へ向けて
上記書類があれば所得控除を受けられる旨のアナウンスを行うとともに
年末までに親族関係書類と送金関係書類が用意できるように声を掛けられてはいかがでしょうか。
参考HP:
国税庁 非居住者である親族について扶養控除等の適用を受ける方へ ※7か国語対応
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/gaikokugo/02.htm
国税庁 令和5年1月からの国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)Q39
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0022009-107_02.pdf
国税不服審判所 公表裁決事例 (令和5年3月14日裁決)
https://www.kfs.go.jp/service/JP/130/06/index.html
寺尾会計事務所 業務効率を上げる! 年末調整業務 のキホン
https://www.teraokaikei.com/2022/12/03/nenmatsu_chousei_kihon/