経営戦略としてのワークライフバランス

中小企業のよくある失敗例

特定社会保険労務士

菅田 芳恵

ワークライフバランスの制度は、整えたものの社員に活用されなくて

「導入前と何ら変わることがない」と言う経営者の愚痴をよく聞きます。

その多くは次のような事例と似ているのが現状です。

制度はあっても使えない

ビル修繕工事会社のA社長は、ワークライフバランスの推進に熱心で、

両立支援策導入はいうに及ばず、法定の有給休暇とは別に毎年5日間の

リフレッシュ休暇も設定しました。

 ところが、このリフレッシュ休暇は、今まで一度も使われたことがなく、

さらには定時退社を推奨しているのに残業の毎日です。

社員は業務が忙しくてそれどころではなかったのです。

 

 A社長は、リフレッシュして仕事に全力投球できる環境を整えようとしたのですが、

この有様でした。導入して1年、何も進展が見られず、売上も低迷しているため

私にアドバイスを求めてこられました。

 原因は一言でいえば社員への周知と管理職の理解不足です。ちなみにリフレッシュ休暇の周知は、制度の説明を社長が一度行い、その後、職場に張り紙をするという程度でした。

 これではワークライフバランスを推進したという事実だけが独り歩きをして、

社員は「知っているけど仕事が忙しくて取れない」という状態です。

 さらに悪いことに管理職が社長の思いを全く理解せずに、部下に残業をさせたり、
有給休暇すら取らせないという環境でした。

ポイントは管理職

 この会社では、まず制度自体は法定以上でとてもよいので、社員に制度内容の説明、そしてリフレッシュするとなぜ仕事の効率が上がるのか、残業はなぜ効率を下げるのかなど、きちんと話をしました。さらに管理職には、徹底的に制度の有効利用を図る意義を

理解してもらいました。

 そしてそれと同時に、課の編制替えを行い、業務の効率化を図り、

仕事の見直しをしました。また、管理職には部下の仕事を毎日把握して、
率先して定時退社、休暇取得を促しました。

 現在は、毎日定時退社とはいきませんが、不必要な残業をしない職場となりました。

 管理職は部下のスケジュールを毎日把握して、仕事の進捗状況を確認するという習慣が

つき、遅いところは事前に手を打ち、業務は非常に効率よく回るようになりました。

 

 予想外だったのは、今まで何も言わずに黙々と働いていた社員が、社長にいろいろと

注文をつけるようになったこと。「これをしたらどうか」「あれはやめるべきだ」

「今度一緒に釣りに行こう」と言いだす社員もでてきて、社長はうれしい悲鳴を

あげています。

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