経営戦略としてのワークライフバランス
ワークライフバランスを推進しよう
特定社会保険労務士
菅田 芳恵
ワークライフバランスの推進
ワークライフバランスの推進は、まず両立支援策の導入です。中小企業においては
「うちは人数が少ないから関係ない」と法令遵守に欠ける企業も見かけますが、
これを機に導入してください。就業規則とは別に育児介護規程として作成すると
よいでしょう。
育児休業、介護休業、短時間勤務制度などを制度化し、社員にはこの制度を周知します。
なお、社員が制度を知らなくて利用できなかったためにかかった費用を
企業に負担させたという裁判例もありますので、きちんと説明をすべきでしょう。
次に残業を削減して、仕事を見直し、業務の効率化を図ります。社員にはなぜ
残業を削減するのか、なぜ仕事を見直す必要があるのかを理解させて、問題点を見つけ
解決を図ります。試しに3ヶ月間で週2日の定時退社日を設けて何が問題になるのかを
検討するのもよいでしょう。実施することで見えないものが見えてきます。そしてその中で誰が休んでも困らない担当制を整え、誰が何をするのかスケジュールを皆で共用化します。
最後は管理職です。管理職には徹底的にワークライフバランスを推進する意義を
理解させ、自らも率先して定時退社、有給休暇取得をさせます。特に長時間労働はリスクであり、生産性を向上させないことを正しく理解させることが重要です。
成功のカギは、この管理職です。
中小企業におけるワークライフバランスの可能性
ワークライフバランスの推進は、一般的に大企業の方が導入しやすいと
考えられがちですが、実は企業の規模には関係がないのです。
ワークライフバランスは、基本的には「ノーワーク・ノーペイ」であり
企業の規模にかかわらず、推進できます。中小企業がワークライフバランスを
推進する場合の最大の課題は、例えば、育児休業する前に担当していた業務をどのようにカバーするかです。
カバーする方法は、前にもお話しをしたマルチ担当制であり、
仕事のマニュアル化です。中小企業の方が社員同士の顔が日常的によく見えているので、
実は休んでも業務はうまく回りやすいといえます。
また短時間勤務制度ですが、これも中小企業でも導入可能な制度です。
短時間勤務であれば、短くなった時間分だけ減額されるのであり、
人件費が増えるわけではありません。ただし、大企業と比べて補充要員の確保は
難しいかもしれませんが、ワークライフバランスが推進されている
働きやすい職場であれば、問題にはならないでしょう。
不況である現在こそ、社員を大切にする様々な制度を導入することは、
様々な効果を社員に実感させることになります。最終的に「この会社に入ってよかった」
「この会社に骨をうずめよう」という忠誠心の熱い社員の誕生とともに
優秀な人材を確保することにもつながり、未来に向けての大きな飛躍のシーズと
なるのです。
制度は導入したけれど効果がでないと悩んでいる経営者の方は、今一度、
社員がなぜ利用できないのか状況を見極めてみましょう。
そこから働きにくい職場が見えてくるはずです。
せっかくの制度なので、効果的に運用してみて下さい。
[完]