在庫問題を考える
在庫管理コンサルタント
豊口幸久
第6回 在庫削減の進め方
最終回として、これまでにお話したことのまとめの意味も込めて
在庫削減の進め方についてお話ししたいと思います。
= 運用の目安をつける =
在庫は、その会社の悪さがすべて集まった物です。
ですから、在庫削減には会社の考え方を初めとした仕事の仕方を変える必要があり、
在庫管理/運用に人的配備を含め、工数・費用を発生させる覚悟が必要です。
まずは、どの位の業務と工数が必要となるか、数部品の在庫分析を行います。
= 現状を知る/在庫分析 =
次は全ての在庫について分析を行い、自社の現状を把握します。
- 全ての在庫を、必要/過剰/不要に分類
- 部品別LTの洗い出し
- 管理資料の策定
1部品毎/1製品毎に、その在庫が必要である明確な根拠と
過剰/不要な在庫を所有するに至った経緯も明確にする
= 取組み方の検討・明確化 =
- 会社としての姿勢・方向性の検討・明確化
キャッシュフローを重視するのか、利益を重視するのか
重視する物/方向性によって、在庫削減の判断基準などが変わる - 判断基準の検討・明確化
判断が難しい課題が出た場合、会社としての判断基準を明確にしておく
年度末(決算)だとかで変えず、経営者がこの判断基準を持ち続けられるか?
社長の判断と担当者の判断をそろえられるか? - 仕組み・管理方法・評価基準の検討・明確化
担当者の努力継続をどの様にさせるか
担当者が在庫を削減する方法を明確に判っていないと、
担当者はただ資料を作るだけの無駄な仕事を、大事な業務と勘違いして過ごす
事になります。
適正な在庫を守る為には、担当者が継続して監視/管理する事が必要になります。
そして、在庫を削減する取組みが評価される制度がないと、
担当者は在庫不足による仕事の増加を恐れ、本気になり難い仕事です。 - 指標/数値目標の設定
指標に対し、目標を持って改善(削減)を続けて行く
最終目標は"在庫0ヶ"です。
しかし、アイディアもなく「在庫削減しろ!」では、効果が出ません。
一気にではなく、継続的に行う事で、会社全体の風土の形成及び成果の継続を図ります。
= 削減活動の実施・見直し =
取組み方を決めたら、後は運用と、その取組みの見直し/改善です。
最後に、2つの例題について考えてみて下さい。
(例題1)
1万円/1ヶの部品が、50ヶ一括購入すると6千円/1ヶになる。
年間必要数は12ヶ。
一括購入すると、単価1万円が6千円になり、製品のコストとしては▲4千円。
一方で、当月は資金が30万円(6千円×50ヶ)必要となり
さらに、在庫が無くなるまで4年かかる。
製品原価/利益を優先させるなら、在庫増加を認め管理する事になります。
キャッシュフローを優先させるなら、製品コストを認める事になります。
さて、御社ではどのような判断をしますか?
年間必要量が24ヶ(在庫2年)の場合はどうでしょうか?
(例題2)
現在お客様との商談中で納期短縮の為、製品を作っておいて欲しいとの要望がある。
契約出来るか出来ないかは未定。
もし契約出来なかった場合、在庫になる。
もし製造を開始せず契約締結した場合、納期が守れず契約不履行になる。
さて、御社では製品を作っておきますか?
部品レベルでの手配をし、被害を最小限にしますか?
誰が最終判断しますか?
担当者はどのような手続きを取るべきですか?
担当者が評価/叱責されるのはどのような場合ですか?
失敗しても現状維持です。一度本気で取り組む事をお勧めます。
[完]