「論語と算盤」を現代の経営に活かす!
ほめる人間力研究所
渡辺洋之
掲載日:令和2年1月6日
第1回 組織は信頼によって成り立っている。
皆さんの組織が最も大切にしなければならないものは何でしょうか?
孔子と弟子の大変に意味深い会話が残っていますのでお読みください。
信無くんば立たず
論語 顔淵第十二より
弟子の子貢(しこう)が 政治の要道(大切な道)を尋ねた。
先師が答えられた。
「食(食料)を豊にし、兵(軍備)を充実し、民に信(道義)を持たせることだ」
子貢が尋ねた。「どうしてもやむなく、捨てなければ為らないときに、
この三つの中どれを先に捨てればよいでしょうか」
先師が言われた。「兵を捨てよう」
子貢が更に尋ねた。「どうしてもやむなく捨てなければならないときに、
この二つの中どれを先にすればよいでしょうか」
先師が言われた。「食を捨てよう。昔から食の有無に関わらず、人は皆死ぬものだ。
然し人に信がなくなると社会は成り立たない」
【伊與田覺先生の解釈です。】
論語をビジネスに読み替えると・・・
これは、政治についての問答ですが、
【政(まつりごと)】の部分を、企業や組織と読み替えてもいいでしょう。
孔子が、弟子の子貢から政治の重要なポイントについて質問を受けます。
孔子は、3つを強調します。
- 食料を十分にする。
- 軍備を十分にする。
- 信頼をもたせる。
ビジネスでは、
- 資金を十分にする。
- 社屋や備品を十分にする。
- 職員間の信頼感を高める。
と読み替えられます。
子貢は、「この3つのうち、やむをえずどれかを捨てなければならないとしたら、
どれを最初にしたらいいでしょうか」とたずねました。
孔子は「社屋や備品を捨てることだ」と答えました。
更に子貢は、「残る2つのうち、どうしても捨てなければならないとしたら、
どちらを先に捨てたら、いいでしょうか」とたずねた。
孔子は「資金を捨てることだ」と答えます。
子貢は、驚きます。(資金が無ければ倒産してしまうではないか…)
孔子は、続けて語ります。
「昔から、人は必ずいつかは死んでゆくものだ。
しかし人と人との信頼関係が無くなったら、すべてが立ち行かなくなってしまう」
リーダーの心得
「貯金」より「貯信」の時代に
企業や組織の上司と部下の信頼関係、従業員と経営者の信頼関係が
最も大事であると言っているのです。
いくら経営資金が潤沢にあっても、どれだけ立派な社屋があっても、
人と人の信頼関係が、崩れてしまった組織が成長することはありません。
組織内の信頼を貯めることが、重要な時代になっています。
リーダーが心掛けるものは
自分の日々の言動は、部下の信頼を得るものだろうか…
やる気にさせる、信頼感ある上司だろうか…
と、絶えず自分自身に問いかけ続けることです。
「信無くんば立たず」この言葉をいつも心の中心に置きましょう。
論語 顔淵篇 書き下し文
子貢(しこう)、政(まつりごと)を問う。
子曰(しのたま)わく、食を足し、兵を足し、民之(たみこれ)を信(しん)にす。
子貢曰(い)わく、必ず已(や)むを得ずして去らば、
斯(こ)の三者に於(お)いて何(いず)れをか先にせん。
曰わく、兵を去らん。
曰わく、必ず已むを得ずして去らば、斯の二者に於いて何(いず)れをか先にせん。
曰わく、食を去らん。古(いにしえ)自(よ)り皆死有り、民、信無くんば立たず。
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