契約の基礎知識
大槻経営法律事務所
弁護士・中小企業診断士 大槻 隆
第5回 契約書作成のポイント=定義条項/一般条項/契約期間=
第5回からは、契約の具体的な条項の定め方に入ります。
契約書作成のポイント
=定義条項=
例えば、「本件商品:本件取引に基づきXがYに供給する商品をいう。」
というように、契約書に出てくる言葉の意味を定義する条項を規定することが
よくあります。
まず、前書きで当事者を「(以下、甲という。)」と、甲・乙で定義することがありますが、
私は、個人的には疑問を持っています。
契約書上で甲と乙を取り違えて勘違いすることがよくあるのです(ミスの温床)。
むしろ名前の略称で定義する方が間違いがないと思います。
例えば、「株式会社ABC商事(以下「ABC商事」という。)と
有限会社XYZメッキ工業所(以下「XYZメッキ」という。)とは、
両者間の業務提携に関し、以下の通り・・・」とした方が間違いがありません。
定義条項はとても重要で、取引対象の「本件製品」をどういう製品に限定するのか
例えば、材料もすべて相手が用意した製品が対象なのか
材料を支給してもらって相手が加工した製品も対象に含むのか
電気製品だけなのか、機械製品も契約の対象なのか
など、正確な定義条項は、実は非常に重要なのです。
また、よくあるミスに、
定義しながら、その後の条項に一度もその言葉が出てこないというケースがあります。
その後の条項に出てこない用語を短い名前に言い換える必要はありませんね。
契約書作成のポイント
=一般条項=
◎ 支払条件 ◎
代金を支払う時期などの支払条件は、一番重要なくらいですね。
例えば、「毎月○日締めの翌月○日支払」
「△△指定の銀行口座に振り込んで支払う。なお、振込手数料は○○の負担とする。」
「代金の半分は現金、半分は手形で支払う(×日サイト)」などです。
支払条件(「支払方法」といいます。)は、最初の交渉段階から決めてください。
◎ 手付と内金 ◎
「手付」という一部前払い金を定める契約もあります。
これには、
正式な「解約手付」といわれるものと、ただの一部前払金の二つのケースがあります。
「解約手付」というのは、民法557条1項で定められているもので、
売買契約が履行されるにあたっては売買代金額に充当されることになりますが、
売買契約が解除される場合には、
買主の方から解除するときには手付金返還請求権を放棄し、
売主の方から解除するときは手付倍返しをすることによって、
両当事者ともそれ以上の損害賠償を請求しないものとして取り扱われる性質の金銭です。
この場合は、契約書に解約の期限(いつまで解約できるか)とか、
解約方法が規定してあるのが普通です。
手付による解約を認めない場合は、単なる内金ということになります。
契約書作成のポイント
=契約期間=
継続的な契約の場合、契約期間を定めることがあります。
条文の配置としては最後の方に置くのが多いです。
ただし、賃貸借契約の場合は、一番前の方にあります。
契約を解約したいが解除事由に該当していない場合に、
期間満了を理由として契約を終了させることが考えられます。
夫婦関係と同じで、永遠に蜜月関係だと考えるのはロマンティック過ぎます!
例えば、
「本契約の有効期間は、契約締結の日から1年間とする
(又は、平成 年 月末日までとする)。
但し、期間満了の2ヶ月前までに当事者のいずれかから書面による解約の申出がないときは、
本契約と同一条件でさらに1年間継続し、以後も同様とする。」
というように、自動更新の条項にすることが多いです。
ただし、これも何も考えずに自動更新にするのではなくて、
契約更新時に取引条件を再協議したいというのであれば、
そういう再協議の条項を入れるか、自動更新ではないことにする
(あらためて契約条件を協議して合意しなければ、契約終了とする)
ということも考えていいはずです。
今回はここまでにして、次回も引き続き、具体的な契約条項について説明します。
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