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AESEAN統合編:なぜ、今、アセアンなのか?アセアン統合の衝撃!
(株)ユアロップ 代表取締役
山田 太郎
2015年アセアン統合の衝撃!
毎日の様に、日本の新聞の経済欄では、アセアンの記事が載っています。
特に、ミヤンマーに関する記事が多いのに気づくでしょう。
では、なんでアセアン、特にミヤンマーが注目されるのでしょうか?
「アセアン統合」という観点からこの地域の地理を見てみるとその理由が理解できます。
アセアンは、タイ、ミヤンマー、カンボジア、ラオス、ベトナム、マレーシア、
シンガポール、インドネシア、フィリピン、ブルネイの10か国です。
この10か国が2015年(一部の国は2018年に統合)すると
人口は、6億4000万人(2015年予測)になります。
北米NAFTA(自由貿易協定、米国、カナダ、メキシコ)で4億5000万人、
EU27か国が5億3000万人、と比較しても大きな人口を持つことになります。
この大きな人口を持った地域がこれから著しい経済発展をしていくのです。
しかも、このアセアンの統合は、非関税貿易の撤廃や投資の自由化という観点では、
いま話題になっているEPAやFTAと言った経済連合と比べて
よりタイトな経済連携を行います。
ここにアセアンはアジア最大級の経済圏が生まれるということになります。
アセアンと中国との関係
アジア最大の経済圏の経済圏は中国そのものですが、
その中国から見てもアセアンは大きな地理的利点をもちます。
中国は、世界最大の人口を持つ国として
今後も内需を中心に大きな発展をしていくと思われます。
そんな大きな中国も実は、中国側の立場にたって見てみると
面する海で、あまり自由な海を持っているとは言えません。
黄海も韓国、朝鮮半島に阻まれています。
日本海は日本列島に阻まれ、沖縄諸島、台湾と囲まれています。
また、南沙海域は、フィリピンとかって中越戦争をしたベトナムに阻まれます。
こう見ると、何故、中国が尖閣列島や南沙諸島の海を欲しがっているのかが分かります。
そして、(中国にとって)自由な海に出ようとしても
東南アジアの大きな半島にぶつかります。
しかし、中国は太平洋やインド洋への出口として
昔から東南アジア各国との関係を作ってきました。
特に、軍事政権だったミヤンマーとは、唯一の支援国のとして
中国雲南省からミヤンマーに抜けるルートで多くの物資を提供してきたのです。
国境付近での水力発電所の開発なども積極的に行ってきました。
つまり、中国のインド洋、アンダマン海に抜けるルート= 南北回廊として
中国とミヤンマーのルートが期待されているのです。
更に、中国がアフリカからの天然資源を確保し、アフリカへの設備の輸出を行うためにも
このルートは注目されています。
日本の自動車業界とアセアン
一方、トヨタをはじめとして、日本の自動車メーカ勢にとっても
タイとインドネシアはこれまで海外の自動車生産の重要拠点でありました。
近年のアセアンの成長に合わせて、
アセアンを市場として、ますます、この2か国での生産拡充を行っています。
この生産拡大が多くの下請け企業も誘って、アセアン全体に産業移転の拡大が
起こっています。
これまでのアセアンの最大の貿易港は、シンガポール港でした。
しかし、もしベトナムから直接タイまで物資が輸送できれば、
コストも日数も大変に有利になります。
また、タイで生産された物資がインドやアフリカに向かうためには、
タイからミヤンマーへのルートも重要です。
これらがアセアンの東西回廊なのです。
アセアン統合とミヤンマーの位置
アセアン各国をこの南北回廊と東西回廊で結ぶ。
そして関税が撤廃されてモノや人の行き来が活発になってくる。
アジアとインド、アフリカの物資がこの回廊を行き来する。
これがアセアン統合の姿なのです。
まさにミヤンマーがそのアセアンの入口として
大きな期待をされていることが理解できると思います。
ミヤンマーは、2014年からアセアン議長国になります。
アセアン統合は、ミヤンマーが正しく軍政から民政に移管できるかが鍵と
アセアン諸国も見ているのです。
[完]