赤字1800万円の小売店が、たった一年で500万円の黒字になったワケ
ワン・トゥー・ワンコンサルティング代表
梅本泰則
第3回 値引きをしない
赤字の原因
このお店が赤字に陥った主な原因は粗利率の低下でした。
どうして粗利率が下がってしまったのでしょう。
社長にその原因を聞いても、判然としません。
「不良在庫を処分し過ぎたのかもしれないな」。
「メーカーからもらえると思っていた値引きも当てが外れたし」。
言い訳とも愚痴ともいえる言葉が口をつきます。
そこで、尋ねてみました。
「お店では、全商品を値引きして販売しているのですか?」
「そうです」。
「それは、どれくらいの値引き率なのでしょう?」
「2割引きで売っています」。
すごいですね。
スポーツ用品のほとんどは、定価で売っても30~35%ほどしか粗利は稼げません。
それを全品2割引だというのです。
これではいくら頑張っても粗利率は13~20%ほどになってしまいます。
しかも、この何年かは売上が停滞しているようです。
その一方で、経費は少しずつ増えています。
経営状態が悪化しているのは当然です。
値引きをやめる
また社長に尋ねました。
「どうして2割引なのですか?」
「以前から2割引で売っているからです」。
それに、近くのスポーツ店も2割引で売っていることも理由のようです。
これでは、理由になっていません。
私は社長に提案しました。
「明日から値引き販売をやめましょう」。
社長は、目を丸くして言います。
「そんなことをしたら、お客様が来なくなってしまいます!」
気持ちは分かります。
「それでは、今すぐに定価で売ってもお客様に抵抗感が無い商品はありませんか?」
と聞くと、
「うーん、無いと思います」という返事です。
「では、単価の低いソックスや袋物などの小物類や、
知名度の低いブランドの商品ならばどうでしょう。
定価で売っても、お客様に抵抗はないのではないでしょうか?」
社長は、そうかもしれないなという顔をしてます。
「では、一度試しにいくつかの商品を定価で販売してみましょう」と提案すると、
しぶしぶながら、社長は試してくれることになりました。
高く売る
そして、私の提案は続きます。
「値付けの方法も変えてみませんか?」
値引き幅を減らして、なおかつ商品が安く感じられる方法です。
たとえば、定価10,000円の商品は8,000円で売られています。
これを、8,800円とか8,990円とか、いわゆる端数価格にして、
なおかつ今までより高い値付けにするのです。
「この方が、逆に今より売れる可能性がありますよ」と押してみると、
社長は半信半疑でしたが、
これもとりあえずいくつかの商品で試してくれることになりました。
しかし、この定価販売や値付け方法に販売スタッフは猛反対します。
当然と言えば当然です。
今まで値引きを強みとして売っていたのですから、
その武器を奪われてしまうことになります。
利益率が上がる
ここは、社長命令で強行突破するしかありません。
販売スタッフの不安とともに、新しい価格戦略が始まりました。
そして、1か月、2か月と経ってきいます。
ところが、販売スタッフの心配をよそに、売上は落ちていきません。
すると、少しずつ彼らの気持ちに変化が現れます。
定価でも売れることに驚きです。
しかも、端数価格の方がお客様は安く感じているようだと、感じ始めました。
また、販売時には積極的に価格以外のセールスポイントをお客様に伝えるように
なっていきます。
ちょっとした販売革命です。
それに伴い、毎月の粗利益率が徐々に上がっていくようになります。
[次へ]