赤字1800万円の小売店が、たった一年で500万円の黒字になったワケ
ワン・トゥー・ワンコンサルティング代表
梅本泰則
第5回 どんな店になりたいのか
本質的な問題
販売する商品を決めて、高く販売する作戦をとり、販売スタッフも元気になりました。
少しずつお店にいい変化が表れていきます。
とはいえ、残念ながら採られた方法は所詮小手先のものです。
このお店が本当に業績を回復するには、本質的な問題に切り込んでいく必要があります。
本質的な問題?
実は、このお店は今まで経営計画書を作ったことがありません。
いえ、売上計画や利益計画は毎年作っています。
経営計画とそれとは別です。
つまり、お店の方向性を明確にしないまま、
売上や利益が前年を上回ればそれで良しとしてきました。
その体質を変えなければ、今後この業界で生き延びていくのは難しくなるでしょう。
経営計画書の提案
そこで、私がコンサルに入って半年を過ぎた頃です。
もうそろそろ良いだろうと思い、社長に経営計画書を作ることを提案しました。
社長もその必要性は理解していたので、話は進んでいきます。
しかし、最初からしっかりとした経営計画書を作るのは、ハードルが高いです。
まずはお店の方向性として「将来どんなお店になりたいのか」ということを話し合い、
文字にしていくことにしました。
そして、社長に次の5つについて考えてもらうよう、お願いをしたのです。
- お客様にとってどんな店になりたいか
- 従業員にとってどんな店になりたいか
- 地域にとってどんな店になりたいか
- 業界にとってどんな店になりたいか
- 社長にとってどんな店になりたいか
お店の方向性
もちろん、社長の頭の中には、こうなりたいという漠然とした思いはありました。
しかし、いざ文章にするとなると大変です。
なかなかうまく表現できません。
何度も何度も書き直した末、次のように考えがまとまりました。
- お客様にとって
いつも親身になってアドバイスをくれる、なくてはならない頼りになる店 - 従業員にとって
自分たちのことを家族のように扱ってくれて、気持よく働くことができる店
周りの人たちに自慢できる店。 - 地域にとって
スポーツの振興ばかりでなく、地域の発展のために力を注ぐ店 - 業界にとって
販売姿勢や販売方法が他店の模範となり、常に新しいチャレンジを続ける店 - 社長にとって
絶えずお店の中がお客様の喜ぶ顔であふれ、お客様の問題解決で地域ナンバーワンの店
いいですねえ。
いわゆる、これが「ビジョン」というものです。
これで、お店がどこに向かっていくのかということが明確になりました。
おそらく、経営計画書の最初の1ページが書けるでしょう。
お店の将来目標
次に、将来の具体的目標を考えてもらいました。
例えば、
3年後や5年後にはどれくらいの売上規模になっていて、
どのくらいの利益を出し、
従業員は何人くらいに増やしたいかといったことです。
社長は、まずは売上目標を考えました。
5年後には現在の売上を1.5倍にするという目標です。
業界の伸び率からしたら、高い目標だと言えます。
それに伴い、利益や人員の目標を立てられました。
そして、経営計画書を作るために、
社長にはもう一つ難しい作業をしてもらうことになります。
それは、次のセクションでご紹介します。
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