顔晴(がんば)ろう製造業 ~前向きな考えのススメ~

航空宇宙業界の現状

タイトルからして難しいと考えないで下さい。

一般に行われているセミナーや講演会よりぐっと身近に感じて頂けるようお話しします。

航空宇宙の市場規模

まずは、通常業界を語る場合の一般的な数値だけは押さえておきたいと思います。

 

市場規模は、航空宇宙併せて約1兆3000億円

内訳は、航空が約1兆円、宇宙が約3000億円。

世界に目をやると全体で20兆円。

国内の市場規模から見れば、

自動車の20兆円に比べ、6.5%位の規模しかありません。

 

ところが今、この業界に注目が集まっています。

航空宇宙に注目

例えば、中部経済産業局が打ち出している

中部地域八ヶ岳構造創出戦略の一角に、航空機・ビジネスがあります。

 

また、愛知県、岐阜県、名古屋市はじめ12地方公共団体が共同で指定申請した

「アジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成特区」が、

平成23年12月22日に国際戦略総合特区として指定されています。

そのためか航空宇宙に関わる講演会やセミナーなどがいろいろな機関で催されています。

 

とは言え、この業界を知っている人はまだまだ少ない状況にあります。

今回は製造業の観点により、読み解いて行きたいと思います。

航空機の製造 ~材料の供給メーカー~

航空機の製造も、材料を加工し、部品を組立て、完成品を造る過程は

自動車となんら変わるところはありません。

 

しかし、プレイヤー(メーカー等)となると少々異なります。

材料の供給メーカーは鋼材を扱っているところが中心となり、

自動車の主材料がスチールであるのに対して、

航空機の主材料はアルミであり、近年は複合材(CFRP)も比率を増やしてきています。

航空機の製造 ~加工と品質保証~

問題は加工です。
プレス加工が多い自動車に比べ、航空機は切削加工と板金加工が主です。

 

生産数の違いもありますが、品質保証の考えの違いによるところが大きいと思います。

これは地上を活動の中心としている自動車に比べ

航空機は空(空中)を中心に活動し、地上も走行します。

 

自動車は何か問題が発生した場合、止まれば基本的に安全ですが、

航空機は空で止まれば落ちるしかありません。

 

当たり前の事ですが、これがいろいろなところで大きな違いとなってくるのです。

 

事故も航空機事故は大惨事になる場合がほとんどです。

そのため、航空機の場合は材料や部品にトレーサビリティが要求される場合が多いです。

 

1つの部品の不具合が大事故を起こす場合があり、
もし事故が起きてしまった時に同種の事故を起こさない為に、

製造工程が判るようにしてあります。

 

もしも機体に問題が生じた場合、

運航する航空会社は、直ちに機体メーカーにその問題を報告します。

 

機体メーカーからはサービス・ブリテンと呼ばれる一種の指示書が

同型機を運航する航空会社に出され、

問題箇所の指摘と

それを解消するために必要とされる作業手順、整備・操縦方法の変更などを指示します。

 

自動車で言うところリコールですが、スピードが違います。

こういう背景があり、部品製作に際していろいろな検査項目が課せられています。

特にフライトクリティカルパーツと呼ばれる重要部品は、

工程ごとに検査と記録が繰り返されます。

航空機の製造 ~組立と試験~

組立は、機体メーカーが行い、各部位ごとにサブ組み立てが行われ、

最終的に胴体、主翼、中央翼、尾翼、エンジン、扉、脚等が組み立てられて行きます。

 

電源、計器、油圧、空調といった装備品は各部位ごとに装備されます。

機体組立後は地上にて各種試験を行い、最終的には飛行試験で機能性能を確認し、

お客様に納入することになります。

中小企業に期待

このように自動車業界とは大きく異なるところがありますが、

部品の切削加工や板金加工、装備品の製作に関わる加工については

中小企業の活躍できる場はまだまだあると思います。

 

写真は筆者が開発に携わった純国産ヘリコプター

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