"大増税"時代の相続税対策
税理士・FP・行政書士
寺尾 省介
※この原稿は、平成25年11月17日時点の法令によります。
第1回 相続税対策を始める前準備
民主党政権時代からささやかれてきた相続税改正が、ついに目前に迫りました。
改正税法は、平成27年1月1日以降亡くなった方に対して適用されます。
瑞穂区のとてもご高齢の方の相続税申告をしたときに、ご家族の方が
「改正前になくなったのが、家族への最後のプレゼントだったのかもしれないねぇ」
と一言おっしゃられたのが印象に残っております。
もちろん、元気に長生きしてほしかったでしょうが、
それだけ今回の相続税法改正がみなさまの関心を集めているのだと感じました。
ところで最近、相続が開始する前に、事前の対策を講じられる方が多くなっています。
これは、後に残される方のことを考える世代の方が増えてきたこと、
新聞・雑誌・テレビなどのメディアで、相続が取り上げられる機会が増えたこと、
改正を前に「私の場合はどうなんだろう」と心配する方が増えてきたためと考えられます。
相続税改正による、基礎控除の大幅引き下げ、税率引き上げ等で、
これまで相続税と無縁だった家庭にも相続税がかかり、
場所によっては、自宅だけでも相続税がかかるようになります。
一方、改正では、自宅敷地の減税が拡大され、
自宅だけでは相続税をかけないようにしようとする仕組みも組み込まれています。
また、教育資金の一括贈与など新しい税制も創設され、
一種の学費贈与ブームも起こっています。
これらの減税部分を十分活用して、節税を図ることが相続税対策として重要なことです。
相続対策の3本柱
今、「相続税対策」と「相続対策」と使い分けたのですが、お気づきでしたでしょうか?
相続税対策は相続対策のひとつで、相続税対策と相続対策は違うものなのです。
相続対策には3つあります。
①遺産分割対策
②手続き対策
③相続税対策
相続対策の基本は、家族へ思いや財産をスムーズに承継することにありますから、
なんといっても①遺産分割対策が一番大切になります。
今回お話しする③相続税対策も大事ではありますが、一番にすえてはダメですよ。
税制は毎年ちょこちょこと改正されますし、
節税になっても相続人の間でもめては、まさに死んでも死にきれなくなってしまします。
①遺産分割対策は、相続でもめ事が起こさないようにしておくための事前対策で、
生前の想いを伝えるために、相続人に話をするとか、遺言や生前贈与の活用するなどです。
②手続き対策は、手続きの省力化のための対策です。
一度経験されるとわかりますが、相続後の手続きには考えているより労力が必要です。
たとえば、多くの銀行に分けて預金しているとか、複数の証券会社と取引があるとか、
どこの保険に加入していたかわからないとかがあります。
後に残された相続人が手続きする点も考えて、整理をしておくことも大切でしょう。
③相続税対策は、事前に現時点での相続税を試算し、節税として打てる対策はないのか、
納税資金は大丈夫かといった税金に関する事前対策を検討することです。
今回は、この③相続税対策についてみていくわけです。
"相続税対策"の前に
相続税対策を始める前に、ご家族や財産の現状を確認しておきましょう。
① 相続人の確認
相続人が妻や子供だけの場合は確認するまでもありませんが、
相続人が兄弟やその子供の場合、婚外子・行方不明の方がいる場合は
相続の際に揉め事になる場合もあります。
② 財産の確認
財産として、何が、どこに、いくらあるのかを確認します。
たとえば、遠方の土地や、実測されていない土地、
建築基準法上の道路に接道していない土地、名義使用の預金など、
財産の実態を確認します。
③ 課題のたな卸し
相続は家庭ごとに事情が違っていますので、
どの部分に問題があるのか、相続人か、相続財産か、相続税の支払いか、など
課題を挙げていきます。
④ 相続対策
さぁ、ここでようやく、
列挙された課題について対策を講じていこうということになるわけです。
専門家の協力などを求め、進めていきましょう。
相続税対策を始める前準備はこれで完了です。
次回は、相続税の計算の仕組みと、改正についてみていきましょう!
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