相続税対策としての生前贈与
寺尾会計事務所
税理士 寺尾省介
この原稿は平成27年8月8日時点の法令によります。
第6回 非課税制度を利用した生前贈与 その2
贈与税には、さまざまな非課税制度が用意されています。
そのほとんどが租税措置法を根拠とするため、制度の利用に期限があります。
生活費・教育費のその都度贈与、教育資金の一括贈与、結婚・子育て資金贈与については
先回お話ししました。
住宅取得等資金の贈与
住宅取得等資金とは、
受贈者が①自宅を新築・取得または②自宅の増改築等の対価に充てる金銭をいいます。
この特例で注意してほしいことは、資金贈与のタイミングによっては、
この非課税の適用ができなくなるケースもあるということです。
この特例を受けるためには、
原則として贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅用家屋の取得等をすることと
住宅用家屋へ居住することが必要であるためです。
増税による住宅の買い控えが考慮されているため、
贈与する年によって、非課税額が異なります。
国税庁該当HP:https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4508.htm
配偶者への居住用財産等の贈与
居住用財産等とは、①国内の居住用不動産、②居住用不動産の取得資金をいいます。
婚姻期間が20年超の配偶者へ、居住用財産等が贈与された場合、
2110万円まで贈与税が課されません。
例えば、今住んでいる夫所有の土地の持分2分の1を妻に贈与するなど、
相続税対策としても活用例が多い特例です。
一般的に、相続前3年以内になされた贈与は相続財産に加算されますが、
この配偶者の居住用財産等の贈与を使ってされた財産は、相続財産に加算されません。
ちなみに、民法上で婚姻していれば要件にかないますので、
何年も別居している夫婦でもこの制度を利用することができます。
ただし、贈与直後に離婚をした場合、
贈与でなく、譲渡所得とみなされる場合もあるため、注意が必要です。
国税庁該当HP:https://www.nta.go.jp/taxanswer/zoyo/4452.htm
特定障害者扶養信託契約による贈与
特定贈与信託は、特定障害者の方の生活の安定を図ることを目的に、
その親族等が 金銭や有価証券等の財産を信託銀行等に信託するものです。
信託銀行等が、信託された財産を管理・運用し、
特定障害者の生活費や医療費として定期的に金銭が交付されます。
特別障害者の方は6,000万円まで、
特別障害者以外の障害者の方は3,000万円まで贈与税がかかりません。
この非課税の適用を受けるためには、財産を信託する際に「障害者非課税信託申告書」を
信託会社を通じて所轄税務署長に提出します。
親亡き後問題は切迫した悩みですが、
この制度を利用することで障がい者の方の将来の生活に備えることも可能です。
国税庁該当HP:http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/koho/kurashi/html/03_2.htm
今回は、相続税対策としての生前贈与と銘打ってご説明してまいりました。
初めにも申し上げましたが、ご家族によって最適な相続税対策は異なります。
財産額の把握と、多面的な観点の下、
皆様のご家庭に最適な対策を検討する参考にしていただければ幸いです。
[完]