分割協議・遺言の大切さ
寺尾会計事務所
税理士 寺尾省介
この原稿は平成28年6月23日時点の法令によります。
第4回 遺産分割協議の種類と使い方
今回は、遺産分割協議をまとめる際に知っておきたい分割協議の基礎について
見ていきましょう。
遺産分割の種類
- 現物分割 → 被相続人の個々の財産を、各相続人で分配する一般的な分割方法
- 代償分割 → 一部の相続人が相続財産の現物を取得し、その現物を取得した相続人が他の相続人に対して代償財産を渡す方法
- 換価分割 → 相続財産を売却処分して、その代金を分割する方法
事例を表形式で見てみましょう。
この事例では、相続人はお母さんと長男。 財産は、自宅・貸家・預金とします。
- 現物分割では、財産ごとに分割を決めていくことになります。
現物分割は、一般的な方法なので、イメージが付きやすいと思います。 - 代償分割では、長男がお母さんより多くの遺産を相続する代わりに、
自分の財産の中から500万円をお母さんに払っています。
例えば、遺産の預金が100万円しかないけれども、
生活費のためお母さんに現金を持っていてほしいといった状況が考えられます。 - 換価分割では、土地を処分して、売却代金を母と長男で分けています。
例えば、複数の相続人の納税資金のために土地を売却する、
今後使う予定のない空家を売却する、といった状況が考えられます。
代償分割の活用
以下では、実務の中でも多く出てくる代償分割について、追加で説明していきます。
代償分割の方法は、相続財産を分けることができない場合に使えます。
たとえば『遺産が自宅の土地・建物だけで、不動産ばかり』といった場合です。
「お母さんが自宅を相続して、他に相続財産はない。
でも、子供にいくらか現金を渡したい」ということもあると思います。
そういった時には「遺産をすべて母が相続する代わりに、母が持っている現金を渡す」
という形で代償分割をすることになります。
現実的には多い事例です。
寺尾会計でもこういった場合に、代償分割があるとお伝えしております。
また、特定の相続人受取の生命保険金が多額にあり、
他の相続人とのバランスが取れない時などにも使えます。
たとえば、母が遺産を相続し、なおかつ生命保険金を受け取っていたときに、
もらった保険金の一部を代償金という形で子どもたちに渡すことができるわけです。
死亡保険金は遺産分割の対象となる相続財産ではないことが特徴で、
相続税申告上で非課税の適用があるだけでなく、代償分割・納税資金としても有用です。
代償分割を使える事例はこれら以外にもあるわけですが、
例えばこういった時に活用することになります。
代償分割の注意点
代償分割はやり方によっては代償分割と認められず、
相続税以外に贈与税や譲渡所得税が課されることがあります。
具体的には、上のスライドのような注意点があります。
他にも、「自分が相続する財産以上に代償金を払うと贈与税が課税される」という
注意点もあります。
先ほどの例で、母が相続する遺産が3000万円だったとします。
そこに、保険金が5000万円入ってきたと。
それをすべて代償金として子供に渡したという場合には
2000万円に対して贈与税が課税されます。
代償分割は他の税金との関係性が高いので、
専門家の意見も聞いたうえで実行してほしいと思います。
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