韓国進出・海外ビジネスのポイント

PRコンサルタント
佐々木 和義

第5回 海外担当は全権大使

意思決定

在韓日系メーカーの役員が、韓国大手企業との商談に臨みました。

 

相手方の希望条件をひと通りヒアリングしたあと、「本社と相談して回答します」

と伝えて商談を終えました。

 

社に帰ると、早速、日本にある親会社の決裁を仰ぐため、商談内容を報告しましたが、

商談相手から「今回の話はなかったことにする」というメールが届きました。

 

日本の意思決定は現場レベルで固めて決裁を仰ぐボトムアップが一般的ですが、

アジアなど海外ではトップダウンが一般的です。

 

日本企業の多くは、部課長級の社員を現地法人の役員として派遣します。

 

トップダウンが一般的なビジネス社会では、現地にいる役員は全権大使であり、

自らの権限ですべてを決定できると考えられています。


トップダウン型企業の商談担当者は、自らのもつ権限を最大に行使して、

その成果をもって、自身の力量をトップにアピールします。

 

すぐに結論が出ないと、「商談の能力がない」という評価にもなりかねず、

破談という結論に至ることもあります。

 

日本からの出張者も同じです。

日本からわざわざ来てくれたということで、商談相手の肩書きは部課長級でも、
実際には、相応の権限をもった人が臨んでくることがあります。


現地法人にせよ、出張者にせよ、その場で即答できない要求を受けることがあります。

 

その場合は、即決できる範囲(条件)を提示して、

その権限を上回る要求については、回答の期限を伝えると良いでしょう。

 

私も肩書きは役員でしたが、メーカーの社員ではないので、即決できないことが

よくありました。

 

そのようなときは、「メーカーと相談して、いつまでに回答を得る」という回答を

していました。

権限の委任

海外ビジネスでは即決を求められることがよくあります。

 

どこまで権限を与えるか、端的にいうと、どこまで現地で判断してよいか、

どこからは日本社、あるいは、帰国後に回答すべきかを明確にしておく必要があります。

 

取引先はもちろん、現地のスタッフも、日本から派遣されている役職者が

どの程度の権限をもっているのか、注視しています。

 

何から何まで日本社や上司に伺いをたてるような人は信頼を得ることはできず、

現地採用スタッフもついてきません。

 

取引先や現地スタッフの前で、日本社や上司の判断を仰ぐ様子を見せることは、

できるだけ避けるようにします。

 

現地スタッフに見えないところで稟議を得て、さも、自身で判断したかのような

演出もときには必要です。

 

そのためにも明確な権限委譲のルールを定め、権限外の内容についても、
迅速な回答ができるよう整えておくことが大切です。

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