従業員に給料分働いてもらうには
トップページ >経営支援資料館~メールマガジンバックナンバー~ >人材・人事 一覧 >従業員に給料分働いてもらうには
さくらマーケティングサービス
西原弘之
第2回 経営者と従業員の意識ギャップ
「給料分」以上の魅力があるか
"給料分以上に働いてもらう"という事が経営者サイドの願いですが、
「給料分」という尺度を従業員目線で言い替えると、
"給料分以上の魅力が会社にあるか"といえます。
- 手塩にかけた社員だったが、仕事を覚えて油が乗ってきたら他社に行ってしまった。
- 育成や教育にコストも時間もかかるが一人前になったら出て行ってしまう。
- 辞めた人間が、お前も来ないかと社内に残っている人材に誘いを掛けているようだ。
- 他社から来てくれたが、彼とてまたそのうち他所に行くかもしれない。。。
中小企業経営者と懇談会などで話していると、このような言葉をちょくちょく耳にします。
なるほどこれらは経営者にとって痛恨の極みです。大きなロスでもあります。
これが続くと社員の育成投資にも腰が引けてしまいます。
ただこのような現象は、つまるところその会社に魅力がないから起こるのです。
従業員の意識を定性的に知る
会社の魅力にも様々なものが予想されますが、
従業員がやりがいを持って活き活きと仕事に向かえれば、
給料分以上の働きをして、結果がついてきやすいだろうと想像するのは難くありません。
では、どのような時に従業員がやりがいを感じるのでしょうか。
下記に添付をしたのは
日本能率協会が1000名のサラリーマンを母数として仕事のやりがいについて問うた
アンケートの結果です。
企業規模や業種、業態によって分けると違う数字が出てくる可能性があるのでは?
と思いそうですが、日本能率協会によると
業種や企業規模にかかわらずサラリーマンの意識は似通った結果を得たとの事なので、
ここでは代表的な統計として掲載します。
ここで大変興味深いことに気づくと思います。
やりがいを感じているグループの理由の上位には
いわゆる効力感(役に立っている、感謝されている、自分が成長している)が並んでおり
収入・給料・報酬にやりがいを感じているのは11%、
順位にして11位という下位にあります。
それに対して、
やりがいが無いと答えているグル-プでは、「納得のいく収入が得られていない」という理由が40%を超えたダントツの第1位にあるという事です。
これを見てどう判断しますか?
「人の役に立っている」
「会社に貢献できている」
「自分が成長している感がある」
ここにやりがいを感じてくれているのはありがたい事です。
これらはいずれも社員それぞれが持つ主観ですから、
そのように社員に思ってもらうにはいくらでも持って行きようがありそうです。
極端な話ですが社員のモチベーションの活性化は、原価ゼロでできると言えます。
統計から読み取れる隠れた意識
さて、
「納得のゆく収入が得られない」ために"やりがいが無い"と答えた人の給料を上げたら
この人たちは「やりがいがある」という方のグループに転化するのでしょうか?
おそらく転化はしないでしょう。
この人たちは言葉を換えれば
「自分はいまの給料分以上の働きをしているのに、認めてもらっていない」
と言っているのです。
また、「お金以外に自分の頑張りをわかってもらっていない」という意識も裏側にあると
容易に推測されます。
「人の役に立てていない」「会社に貢献できてない」「自分の成長につながっていない」
こういった思いがあるのではと疑ってみても良いようです。
もう一点面白いのは、「業務目標を達成できている」という項目が、
やりがいがある方、無い方、ともに理由としてはかなりの下位にあるという事です。
つまり、業務目標はあまり気にしていないのです。
目標達成したことはあまりモチベーションにはならず、
逆に達成しないからと言って凹むわけでもないという事です。
日米の心理学者による数々の実験では
目標達成がモチベーションに転化するのはそれを達成した時のみであり、
未達成だから頑張ろうというリンクの仕方は強く起こらない、と報告されています。
ここは達成度と報酬のリンクの仕方によっても変わってくる点だと思います。
社員の意識を知るツール
ここまで読み進めて、
自社に魅力があるのか、不安になってきた読者もおられるかもしれません。
不安とは実態が分からない事からくるものなので、もしもそのような読者が居られたら
一度社内アンケートを取り実態を把握されてみてはいかがでしょうか。
簡単にやるならば
先に添付した日本能率協会の設問をそのまま用いて選んでもらうことができます。
本格的にされるのであれば「モラールサーベイ」というものがあり、
この手法は特定のノウハウに基づいて社員の意識の深層に切り込もうとします。
代表的なところでは(社)日本労務研究会などがツールを持っています。
次回は、
社員の意識を知ったうえでそれをどうやって会社の力に変えてゆくのかを知るために、
人事考課や目標管理制度の整備について触れてゆきたいと思います。
[次へ]