こうすればうまくゆく! 中小企業のIT・システム化
キャリアコンサルティングセンター
代表 小林 順一
第6回 IT・システム化に失敗する会社
ここまで、IT・システム化の必要性、目的、成功条件についてお話してきました。
今回と次回は、中小企業においてIT・システム化がうまくいかないパターンを、
失敗している会社の例をあげてお話します。
失敗例① 業務の標準化に無頓着の会社
業務が属人的で、その人がいなくなったら業務がストップしてしまう。
そんな会社でのIT・システム化は非常に危ういものがあります。
仕事のやり方が安定化せず、担当が変わる毎に大きく変わってしまうからです。
業務が標準化されていないということは、IT・システム化での最大のネックになります。
例えば、見積書一つ作るにしても、
営業担当10人がそれぞれ違う書き方で、違うフォーマットで書かれていたとしたら、
そして保存も各自のやり方で勝手に保存しているとしたら
これはもうIT・システム化どころではなくなります。
標準化ができていない会社は、IT・システム化の基礎が出来ておりませんから、
たとえシステムが出来上がったとしても「自分には使いにくいシステム」ということになり、
その同調者が増え、いつのまにか、使われないシステムになってしまうのです。
また標準化しておけば、システムのソフトは汎用品が使えるのに、
わざわざオーダーメイドのソフトを発注しなければならず、
システム開発費用が膨れ上がることになります。
そして、そんな会社に限って、
一旦運用に入ってからもシステムの変更を余儀なくすることになり、
追加オーダーは限りなく続き、
ITサービス会社(ソフトハウス)を儲けさせているだけということになります。
結局は予算オーバーで挫折します。
IT・システム化、特にその会社の基幹系システムは、
業務の標準化ができていることが大前提です。
失敗例② コスト比較のセンスを持たない会社
たとえば、ある中小企業が社内ネットワークシステムを導入する場合、
以前からつき合いのあるディーラー系の一社にしか見積りをとっていないとします。
これではいくらそのディーラーが良心的な会社であったとしても、
結局は価格の適正さを見極めようがないのです。
工場の塀の修理をするのに3点見積もりをやるのに、
それよりもずっと高価なシステム構築において全くやっていない会社が多くあるのは
どうしたことでしょう。
ここで3点見積りまでいかなくても、
相見積りを取るだけでもコストを1割~2割ダウンさせることが可能なのです。
相見積りをやっていないことを相手に悟られたらもう、業者の言いなりになります。
ここにも今までのやり方を改革する余地がありそうです。
また、相見積りをやることにより、両社のシステム構築方法の相違点が明らかになり、
新たな気づきが生れることもありますから、
システム構築のアウトソーシングをやるときには是非とも心掛けてほしいと思います。
失敗例③ スーパーオタクのいる会社
いま中小企業におけるシステム責任者に要求されることは、IT技術に詳しいことではなく
経営的な視点でIT化を判断・推進できるかということです。
IT技術はある程度必要ですが、高度な技術は外部SEに任せればよいのです。
IT技術のみにバカに詳しくて経営的視点が抜けているとそれは悲劇の元になります。
こういう人が同じような傾向の外部SEと組むとIT化は迷路にはまってゆきます。
お互いにバランス感覚に欠けるためいつも技術談義だけが始まってしまうのです。
ここに今までの人材配置の見直しの余地がありそうです。
■次回テーマは
<IT・システム化に失敗する外部提携 >です。