在庫問題を考える
在庫管理コンサルタント
豊口幸久
第1回 在庫削減の効果
在庫問題を考えるに際して、まずは在庫を削減する効果について確認していきましょう。
キャッシュフローの改善
会社経営の目的は、利益を上げる事といわれます。
しかし、バブル破綻時には、利益は出ているのに倒産する会社がありました。
これは、景気後退により売上金回収時期が遅れる事で運転資金が不足してしまったのに
銀行からお金を追加で貸してもらえなくなった事が要因です。
また、資金回収の必要性に迫られた銀行が貸付金の返済を求めた事から
利益は出ているのに資金の確保が難しくなった会社もありました。
このように、運用資金に余裕が無いと、利益が出ていても倒産する可能性があります。
在庫(資産)は、お金が形を変えたものです。
ですから、在庫を削減することで、運用資金にゆとりを持たせることができます。
資産廃棄の減少
在庫の削減には、在庫管理が不可欠です。
在庫を管理する事で、不要在庫/過剰在庫/不動在庫が明確になります。
これらの分類が明確になれば、
過剰/不要の分類に入る資産(在庫)を購入・保有することがなくなりますし
在庫の保有期間も縮小されますので、資産の廃棄も少なくなる可能性が高いです。
会社自体の改善
不要な在庫は、その会社の悪さがすべて集まった物です。
『会社の悪さ』は、製品の品質の悪さ・管理の悪さなどと言い換えることができます。
ですから、本気になって在庫の削減に取り組む事は、会社自体の改善につながります。
在庫削減に本気で取り組み、分析/根本原因の追究から改善案が出た時、
会社として考え方を変える必要性に迫られます。
実は、在庫削減の一番の効果は、考える力を養う事にあります。
以上、在庫削減の3つの効果を上げましたが、在庫削減がもたらさない効果もあります。
迅速なキャッシュフローの改善
一つ目の効果としてあげたように、在庫削減はキャッシュフローの改善につながります。
しかし、在庫を削減するには、会社の考え方を含めた仕事の仕方を変える必要があります。
1部品の在庫を減らして、結果が出たから良いとするその場限りの対処処理では
解決しません。表面だけの改善では効果が続きません。
ですから、在庫削減には、お金も人もかける覚悟が必要です。
資金繰りの改善のために在庫を減らしたいと考えるのは経営者として当然ですが
在庫削減に取組めばすぐに資金繰り改善につながるとは言えません。
原価削減/利益改善
在庫削減は原価削減になりません。
また、在庫を管理する工数分の費用が増える可能性が高いので、
在庫削減による利益面での大きな効果はありません。
ただし、会社の財務指標は、より健全な数字になります。
倉庫スペース(賃借料)/保険金額/運用費用の削減
借りている倉庫を返す位の削減をしないと、効果としては計算しにくいところです。
また、在庫削減をしても、入荷/出荷量は変わらない為、大きな運用費用削減は難しいです。
今回は、在庫削減の効果と、もたらさない効果についてお話ししました。
次回は、在庫の基本的な考え方を押さえていきましょう。
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