在庫問題を考える
在庫管理コンサルタント
豊口幸久
第2回 基本的な在庫の考え方
在庫とは?
1度基本に戻って『在庫とは何か』を考えてみましょう。
在庫とは、入荷から出荷(買掛から売掛)の間にある全ての現品のことです。
物を購入して売るまでの間の現品は、全て在庫です。
ですから、在庫は、購入を減らすか、売るかでしか減らす事が出来ません。
社内的に分けて管理していると思いますが、全体で考える事が大切です。
在庫削減の手段として、社内的に左の在庫を右に移すだけの改善になっていませんか。
他の所へ移動させる為の仕事は、無駄な仕事です。
在庫を全体で考えると、削減効果が明確に表れる事が多い様です。
<商品関連>
<サービスパーツ>
在庫が必要な2つの理由
・お客様に提供する時間を短縮する為
お客様が今日必要と言われるのに、注文を受けてから提供するまで1週間かかるとすれば、
この1週間を埋める為に在庫が必要です。
受注してから提供するまでの期間をLT(Lead Time)といいます。
そこで、このLT(例では1週間)を埋める為の在庫を『LT在庫』と呼びます。
お客様の要求納期と、自社が提供できる納期との差を埋める為の在庫がLT在庫です。
*商品を作る部品在庫の場合、注文から納入されるまでの期間となります。
・生産や注文数が計画と違った場合に対応する為
商品は直ぐに増産出来ません。売上が増えた場合に備えて在庫を持つ事があります。
こうした生産や注文数が計画と違った場合に対応する為の予備在庫を
『安全在庫』と呼びます。
*商品を作る部品在庫の場合、納入遅れや生産変動対応用の在庫となります。
最適な在庫数とは?
LT在庫と安全在庫の考え方は、基本的な考え方です。
必要在庫を2種類に分けるこの考え方に対して、わからないと言われた事はありません。
しかし、次の質問に正しい回答をされた方は、ほとんどいないのです。
(質問)
毎月1ヶ売れる商品が、注文してから3ヶ月しないと入荷しないとします。
あなたは、在庫は幾つあれば良いと思いますか?
3ヶと答えられる方が一番多いです。
しかし、理想とするLT在庫は'0ヶ'です。
LT在庫は、すべて必要な時期に合わせて手配済みである事が理想です。
ですから、3か月前に今月分を1つ注文、2か月前に来月分を1つ注文・・・というように、
出荷直前に入荷すればいいので、LT在庫はいらず、0ヶということです。
とはいえ、実際にはこの様なケースはありません。
この質問は、考え方をわかりやすく説明する為の例です。
現実的には、会社の中で在庫'0'は考えられないと思います。
作り始める1H位前には、部品が必要だからです。
トヨタ社でも4H前納入ですので、通常の会社では1日前納入でも難しいと思います。
また、お客様よりお金を頂いてから、部品を発注している会社もあります。
では、先の質問で、安全在庫は幾つあればいいでしょうか?
毎月1ヶ売れるという売上見込み、入手までのLTに変動見込みがなければ、
安全在庫も'0ヶ'で良い事になりますね。
別の例でも、LT在庫について確認してみましょう。
例えば月100万円の生産を行っているとします。
現在次の様な在庫なら納得されますか?
- 部品在庫(翌週分製造用25万円)
- 製造中(今週製造中25万)
- 製品在庫(1週間分25万円)
- 合計75万円の在庫。
でも理想とすべきLT在庫は、次の様になります。
- 部品在庫(翌週分25万円)→ 今週納入する事で'0'
- 製造中(今週製造中25万)
- 製品在庫(1週間分25万円)→ 今週製造した商品を納める事で'0'
- 合計75万円の在庫 → 製造中の在庫のみで25万円
このような理想の在庫状況に近づけていく為に、
在庫が増えていってしまう4つの要因について次回お話しします。
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