在庫問題を考える
在庫管理コンサルタント
豊口幸久
第5回 棚卸の目的とポイント
第1回でもお話ししましたが、在庫の削減の為には、在庫管理が不可欠です。
そして、在庫管理の為にはまず、第3回でお話しした
在庫の種類と数量の要否と、その根拠を明確に記した管理資料が必要です。
ですが、在庫管理の為にはそれだけでは不十分です。
- 現品と帳簿上の在庫数が合っているか
- 現品の管理/保管状況は適切か
これを確認/実感する為に、必ず棚卸作業をきちんと行う必要があります。
棚卸方法の基本
棚卸で一番大切な事は
- 管理されていない物品が有るか?
- 該当する棚に該当する物品があるか? を確認する事です。
棚卸は、基本2人で行います。
その棚(エリア)にある物品を1人が口頭で報告します。
もう1人がそれを記載します(又は、棚卸表に基づき確認します)。
もし、該当する棚に現品が入らず他の所に置いてあったら、それは別棚番号での管理です。
同じ棚として数量を数えてはいけません。
もし、誰かが忘れたボールペンが棚に有ったら、それも棚卸表に記載されます。
棚卸は、棚卸表に現品を合わせる事ではありません。
現品を主にして、その種類/数量が棚卸表と合っているか確認する事です。
ですから、棚卸表をみて「○○2ヶが現品としてある?」と聞いて「有るよ」は、ダメです。
「○○の現品が2ヶあるよ」と報告し「記載ok」という具合に、必ず現品からです。
棚卸は、その棚にある全ての現品が何個あるかのみ調査する事です。
これ以外の事をしているとすれば、異常です。
倉庫巡視のポイント
棚卸は、管理者を含め担当者が行う事が、良いと考えます。
管理者による倉庫巡視は、
問題把握と、管理者が在庫に対して関心がある旨のアピールになります。
一方で、管理者の巡視において、的外れな指摘をすると、担当者になめられます。
管理者巡視で見る最大のポイントは、訳の判らないものがないか?の確認です。
少ない時間で巡視を行うには、次の項目に注意すると良いと思います。
1. 倉庫は、隅を中心に見る。
倉庫は物置になり易いものです。
管理出来ていない物品は、倉庫の隅や裏に置かれている事が多いものです。
まずこれが出来れば、管理者としてokです。
2. 現品は用途別に管理されているか。
製造用の部品/商品/固定資産、及び清掃用具等、用途別に明確に区分されているか。
同じ棚の中に種類の異なる部品/商品が混在する場合、棚卸が出来ません。
棚卸表で棚卸をすれば出来るとの回答が良くありますが、
これでは現品からの棚卸になっていません。論外です。
3. 倉庫全体に棚番号管理がされているか。
誰が見てもどこに何が有るか判る対応を求める事は、倉庫管理の基本です。
棚番号のレイアウト図はありますか?
監査では、棚番号表とレイアウト図を求められる事が多いです。
棚卸結果報告とレイアウト図から、全部棚卸しているかを把握します。
棚番号が表示されていない壁置きしてある品物は、監査時の指摘対象です。
4. サンプルで現品の確認
不思議なもので、監査員がサンプルチェックすると、異常値が出ます。
現品と帳簿上で異なる在庫を見つける超能力が備わっているかのようです。
上級管理者でも、鼻が利くのか、訳の判からない現品をパッと見つけます。
これは、超能力的な事としてあきらめなければなりません。
ランダムに抽出した10点位の現品について棚にある数量と帳簿の数量のチェックを
継続して月1回位実施すると、この超能力が身に付くかもしれません。
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