日本経済新聞を上手に読む方法
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帝京大学経済学部教授
山本 博幸
掲載日:令和元年9月24日
第3回 "馬鹿にするな"といわれそうですが、これこそが基本
その昔、研究機関の新人の仕事は、スクラップブックを造ることから始まりました。
造るというよりも先輩が継続していたファイルの維持でした。
スクラップブックは旧時代の遺物か
既に徒弟制度的時代は終わり、
ネット検索やネット統計も含めて情報が簡単にとれる現代に、
スクラップブックは流行らないと考える方も多いかもしれません。
既に電子版にはそんな作業が必要ない仕組みができている。
しかし、商船大学でも帆船の操作を大切にしているように、
情報分析はハサミ、赤ペン、のりとともに、スクラップブックから始まることを
覚えておきたいのです。
みなさんは、研究者になるというわけではないでしょう。
自分の知識を体系的なものにし、勉学やビジネス現場で利用し、
世の中の政治や経済を的確に理解したいというのが、
日本経済新聞を読む目的でしょうね。
すると、スクラップブックの作成は昔の研究所とは違ったものになります。
僕もスクラップブックをつくっていますが、
よほどのテーマがない限り"まぜこぜ版"で済ましています。
"テーマ別"スクラップブック
テーマを追ったスクラップブックは本当をいうと今はもっていません。
2年ほど前、一つだけありました。
テーマはフランス大統領選挙問題でした。
結果的にマクロンがダークホースとして登場し、勝利したのです。
スクラップブックのお陰で
5ヶ月ほどまえからマクロンが当選するだろうという気配を感じる事ができました。
このフランス大統領選挙のスクラップブックを利用して、
某大手金融機関のセミナーなどで講師を務め、
又雑誌に頼まれたコラムを上手に書くことができました。
日本の新聞は、批判はあるとはいえ、事実に関してほとんど間違いはありませんし、
それをベースにして語っても全く問題は起きないのです。
基本は中立を旨としているので、その点も心配ありません。
とはいえ、40年以上も日経新聞を読んでいるのですが、
別冊スクラップを作る、特別テーマが時々一つ、せいぜい二件あるくらいです。
正直、現在のテーマはありません。
"まぜこぜ版"スクラップブック
僕のスクラップブックはどうなっているのか、興味が湧くと思いますが、
とても簡単なものです。
今は、スクラップブックは一つ、それも3ヶ月程度持ちます。
なぜなら、あまり貼りつけないので、なかなかすすみません。
種明かしをします。
これはと思う記事を切り取ってスクラップブックに貼りつけるのです。
研究所や学者は丁寧にこの仕事をしますが、皆さんはいい加減でいいのです。
たとえば、最近絶好調のドラッグストアの成長という記事ありました。
理由が腹に落ちたら、切りとって、スクラップにするだけでOKなのです。
すべて、まぜこぜで貼りつけます。
貼りつけたからには、他のニュースより際立った情報があるからです。
たとえば、
- ドラッグストアの年間売上は7兆円に近づき、まだ伸びている。
- ドラッグと言いながら食品が50%以上も売上高に占めているケースも多い。
- 利益率の高い薬品や化粧品で収益を確保し、食品を割安にして成長した。
などなどと記憶するのです。
新聞で読み、スクラップしながら更に要旨を頭でまとめながら貼りつける。
本当をいうと
スクラップブックは100円ショップで売っているもので全く問題ありません。
三カ月から半年で一冊使う程度のスクラップペースでOKです。
年間数冊になり、時々読み返すことで、ますます日経新聞の理解に磨きがかかります。
第4回に続く
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