黒字経営にするために
中小企業支援のための中小企業診断士
河合裕
掲載日:令和2年3月3日
第1回 黒字経営の黒字とはどの利益を考えればいいでしょうか?
「会社が続いていく」ためには、「会社の決算書が黒字である」ことが重要です。
黒字か赤字かを判断するためには、利益をみます。
利益をみる決算書は損益計算書ですね?
利益をみるといっても、損益計算書の上から順番に、
- 売上総利益(粗利) =(売上-仕入)
- 営業利益 =(売上-仕入)- 販管費
- 経常利益 =(売上-仕入)- 販管費 ± 経常損益
- 税引前利益 =(売上-仕入)- 販管費 ± 経常損益 ± 非経常損益
- 税引後利益(純利益)=(売上-仕入)- 販管費 ± 経常損益 ± 非経常損益 - 税金
なんと5種類もあります。
さて、どれを主に見て、黒字経営を考える指標にすればいいのでしょうか?
純利益を指標とする場合の問題点
もちろん、最終的にいくら残ったのかをみるのは、(5)の純利益です。
これは、あらゆる経常的な収入と費用、また特別に発生した収入と費用、
さらに税金を払っていればそれも指し引いた最後の残りです。
確かに最終の数字がすべてなので、これを指標に黒字を考えてもいいですが、
そこに至るまでに考えなければいけない要素がありすぎます。
経営者はもちろん、実際に汗水ながして働く社員にとって、
指標・目標はシンプルであるべきです。
なぜか?
営業をしている人たち、生産をしている人たち、
つまり、
収益の直接の源泉としての業務をしている人たちの日頃の活動の目標が複雑すぎると、
そちらに足をとられ、肝心の活動が弱くなるためです。
ですから、シンプルに考えるためには、(5)の純利益は不向きと言えます。
売上を指標とする場合の問題点
目標はシンプルであるべき。
この考えを軸に考えると、もっともシンプルな経営目標は売上ですね。
今日、何個売る?今日、何人に売る?などきわめてわかりやすい。
でも、ここで問題があります。
売上では利益が把握できないのです。
安売りしたらどうでしょう?
売上はあがります。でも、赤字受注をしているかもしれません。
赤字受注というのは、売上<仕入の状態、つまり、売れば売るほど赤字になる受注です。
つまり、
売上目標は一番シンプルですが、必ずしも利益につながるとは限らないということです。
黒字経営のための最適の指標
それでは、どの指標がいいのでしょう?
それは、損益計算書上、売上の次にくる (1)売上総利益(粗利)です。
粗利目標であれば、シンプルですし、
基本的には数字が増えれば増えるほど黒字経営に近づきます。
次回は、黒字経営をめざす指標として最適な「粗利」をあげる考え方をお伝えします。
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