契約の基礎知識
大槻経営法律事務所
弁護士・中小企業診断士 大槻 隆
第10回 契約書作成のポイント=署名押印=
契約書作成のポイント
=署名(記名)・押印= (1)自然人の場合(未成年の場合)
署名・捺印が普通です。
でも、法律上は、署名または記名・押印でいいことになっています。
印鑑は認印でも契約は有効といえば有効です。
ただし、将来の立証のためには、実印で押してもらい、印鑑証明書を添付してもらうと、
名義人本人が署名・押印したことが法律上推定されます。
つまり、記名でさらに認印の押印だと、
本当に本人が押したのかどうかの証明が難しくなります。
個人の場合、印鑑証明書または免許証のコピー等により、
本人確認をしておいた方が良いでしょう。
特に、連帯保証人の場合は、後に「保証していない。」と主張されることがあるので、
要注意です。
また、住民票上の住所と現実の居所が異なる場合は
その理由を確認し、必要であれば両方明記してください。
将来、訴訟において当事者の同一性が問題となる可能性があるからです。
◎未成年の場合◎
未成年者の場合は、「法定代理人親権者」の肩書きで両親が署名・押印します。
離婚等で親権者が1名の場合を除き、両親とも必要です!
未成年者の署名・押印は後日に取消可能になりますから、注意してください。
◎お年寄りの場合◎
お年寄りの場合、認知症などのために成年後見が開始されていると、無効になります。
また、高齢者で成年後見が開始していることが疑われる場合は、
成年被後見人でないかどうかの確認のため、本人に依頼して
法務局で証明書を発行してもらうのが安全です。
契約書作成のポイント
=署名(記名)・押印= (2)会社の場合
原則は、会社代表者名で記名(ゴム印かワープロで記載)と押印です。
株式会社の場合は代表取締役・代表執行役(委員会設置会社の場合)、
有限会社の場合は代表取締役又は取締役(代表取締役を定めていない場合)、
合名・合資・合同会社の場合は業務執行社員になります。
権限を厳密に調べるには、会社の現在事項証明書と取締役会議事録等の徴求や
社長への直接の意思確認等が必要となります。
契約は(当たり前ですが)契約締結の権限がある者が行う必要があります。
つまり、その権限が認められているのであれば、従業員(例えば、担当部長)でも
契約締結は可能です(会社法11条・14条など)。
会社の場合、角印という会社印を押すことが多いですが、これは飾り印といわれていて、
これだけでは法律的な意味を持たないことがあるので注意が必要です。
通常は実印を丸い印鑑にしているので、それをちゃんと押してもらわないといけません。
また、会社と取締役との利益が相反する取引の場合、
取締役会の承認手続が必要なので注意です(会社法356条など)。
取締役会の議事録のコピーをもらうなどの確認作業が必要です。
登記簿上の住所と実際の住所が異なる場合や、本店住所を移転している場合は
その理由を確認し、必要であれば両方明記してください。
将来、訴訟において当事者の同一性が問題となる可能性があるからです。
契約書作成のポイント
=署名(記名)・押印= (3)代理人の場合
「○○代理人」との肩書きを付けて署名・押印します。
委任状の添付が必要です。委任状への記名・押印は、(1)(2)の通りです。
契約書作成の内容に係る事項は以上です。
次回は最終回です。契約書に付随する事項についてご説明していきます。
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