資金調達したい経営者のための【銀行対応入門講座】
経営コンサルタント
平野貴之
第5回 銀行対応の基本「資金繰り表編」
次の銀行対応(特に、資金調達)の基本としては、
銀行員は「資金繰り表」のどこを見ているか?です。
資金繰り表を作成していますか?
資金繰り表は、将来のキャッシュの動きを表す表です。
事業計画書と同様に、この資金繰り表にも、作成のルールも法律もありません。
よって、作成していない会社も多いです。
さらに言うと、作成していない割合は、事業計画書よりももっと多いはずです。
なぜなら、
そもそも事業計画書を作成していないと、資金繰り表も作成出来ないからです。
売上の予測がなければ、いくらキャッシュが入って来るか予想が出来ません。
また、どんな戦略、戦術で行動するかが分かっていないと、
どのくらいの費用がキャッシュとして出ていくのかが分かりません。
事業計画書がなくても、1か月くらいの資金繰り表(日繰り表)はできますが、
本格的な資金繰り表(1か年)は作成のしようがありません。
銀行の言いなりにならないためにも資金繰り表を作ろう
第1回でもお話したように、銀行員は、資金繰り表で、将来の収入の状況を把握します。
しかし、資金繰り表には、もう一つ、大切な役目があります。
資金繰り表を作成していないと
銀行取引は「銀行の言いなり」になってしまうのです。
このように話すと、
「資金繰り表がなくても銀行の言いなりにならないように、銀行員に怒鳴ってやる」
と勘違いしてしまうかもしれませんが、それは違います。
そんなことすれば、銀行取引は上手く行きません。
「言いなりにならない」ということは喧嘩するとか、
こちらの言いなりにするという意味ではなく
「対等に交渉をする」と言う意味です。
そうです、資金繰り表がないと対等に交渉が出来ないのです。
なぜか?
それは、資金繰り表がないと「近々、資金が不足しそう」というイメージだけで、
いつ、いくらの資金が必要なのかを銀行に伝えることが出来ないからです。
そうすると、
銀行員が判断して融資額を決めたり、銀行の都合で融資判断をしたりする状態となります。
これでは、経営判断を銀行にすべて預けているようなものです。
また、資金繰り表で先の見通しが立っていないと
直前まで資金不足や資金必要額が分からないということもあります。
そうすると、
銀行に嘆願するような、「言いなり」になってしまうような気分になるのです。
逆に、資金繰り表があれば、
「現状は◎◎のような状態であり、その対策のためには、△△をしていく。
そのための資金として、××円必要。よって、融資を申し込みたい」と
早い段階で、銀行に交渉が出来るのです。
そうすれば、銀行としてもこちらの希望に基づいて融資判断が出来ますし、
「ここを修正すれば、対応できる」と言うようなケースにも対応出来ます。
もし銀行融資が出ないとしても、
自社でも早めに他の資金繰り対応が出来るようになるのです。
資金繰り表の本当の使い方(銀行との付き合い方)
以上でお話しましたように、資金繰り表は、「銀行に提出する書類として」と言うよりは、
それ以前の「銀行とどのように付き合うか?」
(いつ、いくら、どのような理由で、どのような返済原資を確保して融資を申し込むか)
という経営判断のために活用できる表なのです。
よって、銀行対策の中でも重要度が高いのです。
ところが、繰り返しますが、どのようなフォームで作るかも、強制される法律もないので、
作成していない会社が多いのです。
銀行との友好かつ有効な取引関係を続けていくには、
資金繰り表の作成は必須と言えるのです。
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