海外投資で知っておきたい4つの法制度
FutureVision株式会社
代表取締役 上原崇寛(たかのり)
第5回 プロベイトを避けるには
前回はプロベイトという、海外の相続特有の制度について触れました。
ではこのプロベイトや、海外相続を避けるには、どのようにすればよいのでしょうか。
(※なお、相続税を避けることはできません。
あくまでプロベイトの煩雑な手続きを避けることが趣旨になります)
『生命保険の場合』
生命保険で受取人の指定をしていれば、プロベイトされることはありません。
契約できることに一定の要件や注意点がありますが、
海外駐在を経験している方などで、生命保険を保有している方はいらっしゃいます。
余談ですが、海外の生命保険は、所得税の生命保険料控除は適用できないのですが、
相続時の生命保険の(法定相続人×500万円)の非課税限度額はあるとされています。
『銀行口座の場合』
海外の銀行口座では、共同名義という開設方法が取れることが多いです。
夫婦や親子など、2名の名義で、共同で使用する口座を開設することができます。
共同口座の場合、名義の片方の死亡時には、
残っている片方で手続きを行い、口座のお金を引き出すことが可能です。
ただし、共同名義の口座の場合、その相続時の評価額や、
そのお金は贈与に該当するかどうかなど、別の注意点が必要になります。
『日本国内の法人で海外資産の契約をする』
その資産の内容により異なりますが、
法人契約にすることでプロベイトを避けることはできます。
日本国内で不動産を多く所有している一家や、
創業者・起業家が、資産管理会社を設立することと似ています。
ただし、法人契約の場合でも、海外ならではの注意点は出てきます。
『日本国内の法人で海外資産の契約をする場合の注意点』
個人の場合だと、パスポートや国際運転免許証などで、
本人確認は簡単に行うことができます。
しかし法人の場合だと、その実態を示すのが難しいため、登記簿謄本はもちろんのこと、
定款や、役員・主要株主名簿までも英語で提出することが求められる場合があります。
これは取引相手や国により異なるので、
何を求められるかが事前にわからないことも多いです。
また作成するだけでなく、作成したものが正しい内容であることを示すため、
翻訳した書類を、公証役場で認証してもらうことも必要になる場合が多いです。
『海外法人を設立あるいは所有し、海外資産の契約をする場合の注意点』
海外法人の場合は、設立の手続きや、会計士などを当該国で準備する必要があります。
また、法人が設立できても、法人の銀行口座が開設できないという事態も時に起こります。
過去設立して現在は休眠状態となっている海外法人を買い取るという方も、
中にはいらっしゃいます。その場合でも、株主の変更や法人銀行口座の登録サイン変更など、気を付けなければならない点はあります。
海外法人の売買については、本筋ではないので大きく振れませんが、
どのような条項や、ある種の爆弾が定款の中に入っているかわかりません。
あまり言いたくはないのですが、
「海外で日本人が騙されるのは、日本人からのケースが多い」というのが
ここでも当てはまる可能性は大いにあります。
また、海外法人の場合は、相続の際に遺族が対応できるのかがポイントになります。
『最後に』
5回に渡り、海外投資のルールや注意点を紹介いたしました。
- 利益分の所得税を確定申告して、正しく収める
- 国外財産調書、財産債務調書の提出対象であれば、事前に資産の申告を行う
- 隠れてお金を海外に持ち出すことは、そもそもしてはいけないし、簡単に捕捉される
- 海外資産においてはプロベイトについて留意する。
海外投資を行う際や、上辺だけの甘い話に乗って手痛い思いをしないためなどの、
一助となれば幸いです。
[完]