大不況を生き抜くための中小企業における新規事業の進め方
新規事業を開始する上で再確認および取組むべき項目
戦略組織コンサルティング合同会社 代表
関西大学 大学院 商学研究科 非常勤講師
村上 統朗
= 新規事業を実施する上での再確認項目 =
① 何のために新規事業に取り組むのか?
新規事業を実施する上で、まず再確認すべき項目は、
そもそも、① 何のために新規事業に取り組むのか?ということです。
会社再生のためなのか、さらなる成長を求めるためなのか、
社内の活性化のためなのか、後継者育成のためなのかなど、
具体的な目的を再確認する必要があります。
それにより取り組む事業内容や、リスクに対する考え方が異なってきます。
② 新規事業はどんな不満・問題を解決しているのか?
次に、明確にしたターゲット顧客に対し、
② 新規事業はどんな不満・問題を解決しているのか?
ということを確認しなければなりません。
例えば、価格に不満があったものを安く提供できるのか、
品質に問題があるものを改良し品質向上できたのか、
リードタイムを短くし納期短縮ができたのかなど、
新規事業によって提供される製品・商品・サービスの「売り」を再確認します。
明確になった「売り」の部分は、販売先やお客様に対して強調して説明する点であり、
強く認知していただく部分となります。
③ 新規事業はどんな不満・問題を解決しているのか?
最後に③ 誰に何をどのように販売するのか?
儲ける仕組み、ビジネスモデルを再確認します。
第2回にて、釣りの例を用いてご説明させていただいた内容です。
上記、再確認項目を明確にした上で、次にあげる6つの項目に取り組みます。
= 新規事業を実施する上で取組むべき項目 =
① ビジネスプランの作成
やってみなければわからないという理由で
事業計画を立てない場合が多く見受けられます。
しかし、経費積み上げによる必達売上および粗利益高は、
必ず把握しておく必要があります。
② 成功報酬制度の構築
中小企業においては余裕人員がいないため、
新規事業に携わる社員は、ほとんどが兼務になります。
ただでさえ忙しいのに仕事が増えるのですから、
「やってどうなるの?」「給与や賞与は増えるの?」といった
不安要素を取り除かなければ、誰も本気で取り組みません。
新規事業に関わった人材をどう処遇するかは、とても重要な問題です。
「成功するかどうかわからないのに処遇なんて・・・」というのは
経営者側の一方的な見方です。
笛吹けど踊らずとならないためにも、
「これだけ売上・利益を獲得したらいくら払う」と
具体的な処遇について、実際に携わる社員に必ず明示してください。
金一封的な発想では、間違いなく新規事業は失敗します。
③ 撤退基準の明確化
企業体力のある大企業であれば、いつか化けるかもしれないと
不採算事業でも保有することも可能です。
しかし、不採算事業の保有は、中小企業の経営体力を大きく損ないます。
3年間赤字が続いた場合、累積赤字がいくらを超えた場合は撤退するなど
撤退基準を明確にします。
④ 必要な経営資源の獲得または外部の活用
中小企業の経営資源は限られているため、
人であれば商工会議所や産業支援センターの経営指導員、
金であれば各種補助金、物であれば試験センターや各種設備など、
無料もしくは安く使えるものは何でも使い切ります。
必要な経営資源の確保、外部の経営資源の有効活用を検討しましょう。
⑤ プロジェクト決死隊の編成
新規事業に、どういうメンバー編成で臨むか、ここが重要なポイントです。
新規事業立ち上げ時においては、即決を求める事案が多数発生するため、
社長がリーダーであることが望ましいのは言うまでもありません。
社長が陣頭指揮を執り、決死隊として背水の陣で臨まなければ成功はおぼつきません。
また、メンバーの選定においても、エースクラスの社員を投入します。
社長は実務への影響を考え、二の足を踏む場合が多いです。
しかし、社長の覚悟を社内に示すためにも、エースクラスの社員投入が必要です。
⑥ 数値による経営指標の日々測定実施
新規事業は、毎日が勝負であるため、
訪問件数や見積もり件数など主要な経営数値は日々チェックし、
指示や指導していかなければなりません。
刻々と変わる状況を数値で毎日把握しましょう。
上記に対し愚直に取り組み、組織づくり・仕組づくりを行い、
日々仮説を検証し、試行錯誤を徹底的に行うことによって
新規事業は立ち上がっていきます。
経営に奇策なし、新規事業に近道なしです。
今まで全5回お付き合いいただきまして誠にありがとうございました。
ここまで読まれた皆様は以下が埋められると思います。
是非埋めていただき、新規事業を始められる際の参考にしていただければ
幸いです。
どうもありがとうございました。
[完]