不動産に関する基礎知識
株式会社東京カンテイ
名古屋支店 不動産鑑定室
不動産鑑定士 波多野 茂
鑑定される不動産
不動産鑑定士が鑑定評価を行うのは、どのような不動産なのでしょうか?
今回は実務上、鑑定評価を依頼されることの多い不動産をご紹介させて頂きます。
①更地
更地とは、「建物等の定着物がなく、かつ、使用収益を制約する権利の付着していない宅地」
をいいます。
更地評価の依頼目的は様々ですが、評価機会の多い不動産です。
更地の鑑定評価は、不動産の最有効使用(その不動産の効用が最高度に発揮される可能性
に最も富む使用)を前提に鑑定評価額を求めることが原則です。
土地上に建物等が存していても
「建物等が存しない更地として」鑑定評価を行う場合もあります。
(例)未利用地、空地、資材置場、隣地売買、広大地、グラウンド、開発分譲素地等
②自用の建物及びその敷地
自用(じよう)の建物及びその敷地とは、「建物所有者とその敷地の所有者が同一人であり、
その所有者による使用収益を制約する権利の付着していない」土地及び建物です。
建物は賃貸借に供されていません。
売買、担保評価、財務諸表上の時価把握等が主な依頼目的です。
この不動産は更地と異なり、例えば、繁華街に建つ老朽化した倉庫のように
当該土地の最有効使用がその建物によって制約される場合があるため、
建物を取り壊すことが最有効使用と判断して鑑定評価を行うこともあります。
(例)自社工場、自社ビル、戸建住宅、自社店舗、自社倉庫等
③貸家及びその敷地
貸家(かしや)及びその敷地とは、「建物所有者とその敷地の所有者とは同一人であるが、
建物が賃貸借に供されている」土地及び建物です。
入居者・テナントがいるので、実際に収受している賃料の額、空室率、
建物に係る経費の多少等が不動産の評価額を左右する「収益性」が重視される不動産です。売買、担保評価、財務諸表上の時価把握等が主な依頼目的です。
(例)賃貸アパート、賃貸マンション、貸事務所、賃店舗、貸倉庫等
④区分所有建物及びその敷地(自用、貸家)
主に分譲マンションの1室を指します。分譲マンション1室の流通価格は、
インターネット等で比較的入手しやすいので、
一般の人でも相場感が掴みやすい不動産です。
鑑定評価は、競売・公売等の目的で依頼される場合が多いです。
⑤底地
底地とは、「借地権の付着している場合における宅地の所有権」です。
底地の購入者は、地代収入を目的とする第三者、
または、当該土地を借りている人(借地権者)等が想定されます。
借地権者が底地を購入するとき、
安く買いたい借主と高く売りたい貸主との間の調整が困難な場合があります。
また、同族間・親子間・グループ企業間で賃貸借していた土地を売買する場合に、
適正な取引価格の指標とするために鑑定評価を依頼される場合があります。
底地の取引価格水準を把握することが一般的に困難な事情も、
鑑定評価が依頼される一因でしょうか。
⑥借地権、借地権付建物
借地権とは、「借地借家法に基づく借地権(建物所有目的の地上権又は土地の賃借権)」
です。
借地権は、土地を長期間占有し独占的に使用収益し得る安定的利益のほか、
賃貸借契約締結時の地代と、その後の地価上昇又は下落に伴う現在の地代水準と
乖離している場合(賃料差額が発生している場合)に借地権の経済価値が認められます。
借地権売買は、第三者に売却する場合、
他人に貸していた土地を買い戻す時の借地権の鑑定評価があります。
借地上の建物と合わせて評価を行う場合には、「借地権付建物の鑑定評価」となります。
借地権も底地と同じく、取引価格水準を把握することが一般的に困難なため、
鑑定評価を依頼されることが多いです。
⑦地代、家賃
地代とは土地の賃料をいい、家賃とは建物一棟または一室の賃料をいいます。
土地又は建物を他人に貸す場合、適正な賃料を算出したい時に「新規賃料の鑑定評価」を
依頼されることがあります。
賃料は一旦契約締結をしてしまうと、
地価の上昇又は下落に合わせて地代を増減額させるのは容易ではないため、
地価水準に応じた適正な地代を把握したい時に
「継続賃料の鑑定評価」を依頼されることがあります。
評価作業は、新規の時よりも採用する評価手法が多いために手間がかかります。
以上で、不動産鑑定業務において評価機会の多い不動産の類型をご紹介しました。
皆様も不動産についてお困り事がございましたら、
不動産鑑定業者へご相談されてはいかがでしょうか?
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