基礎から学ぼう、相続税
税理士・FP・行政書士
寺尾 省介
第1回 相続税はどうやって計算するの? 相続財産には なにがあるの?
相続税の基本中の基本として、まず初回の今回は、相続税の計算のしくみを見て、
後半には、相続税の課税対象財産についてご説明します。
では、具体的に見ていきましょう。
図と式を見比べると、少しわかりやすくなると思います。
相続税額の算出に至る一連の流れ
まずは、各人の算出税額について見ていきます。
各式の下に、具体例での計算式を示します。
具体例は、正味の遺産額が7800万円、相続人が子3人。
長男が5200万円、次男三男が1300万円ずつ相続する場合です。
① 預金や株式、土地や家屋などの「本来の相続財産」の価額
+ 生命保険金や死亡退職金等の「みなし相続財産」の価額
+ 相続時精算課税を適用して贈与を受けていた財産の価額
- 債務・葬式費用の金額
+ 相続開始前3年以内に贈与を受けた財産の価額
= 各人の課税価格の合計(正味の遺産額)
② 各人の課税価格の合計 - 基礎控除額 = 課税遺産総額
※ 基礎控除額 = 3000万円 + 600万円×法定相続人の数
7800万円 - 4800万円 = 3000万円
③ 課税遺産総額 × 法定相続人それぞれの法定相続割合 = 各人の取得金額
(1,000円未満切捨)
3000万円 × 1/3 = 1000万円
④ 各人の取得金額 × 相続税率 = 基となる税額(100円未満切捨)
1000万円 × 10% = 100万円(各人)
⑤ 法定相続人それぞれの 基となる税額 の合計 = 相続税の総額
100万円 + 100万円 + 100万円 = 300万円
⑥ 相続税の総額 × 各人の遺産取得割合 = 各人の算出税額
300万円 × 5200万円/7800万円 = 200万円(長男の相続税)
300万円 × 1300万円/7800万円 = 50万円(次男三男の相続税)
各人の申告納税額に至る流れ
では次に、各種控除について見ていきましょう。
⑦ 各人の算出税額 - 各人の税額控除 = 各人の差引税額
⑧ 各人の差引税額 - 相続時精算課税制度分の贈与税額 - 各種の納税猶予額
= 各人の申告納税額 (100円未満切捨)
詳しい計算式はともかく、
図を見てなんとなくイメージはつかんでいただけたでしょうか?
「被相続人の財産」には何があるの?
上で見てきた計算式のうち、申告や税務調査で問題となってくるのが
①すべての財産を計上できているか、②財産はいくらなのか、という2点、
つまり、『被相続人の財産額』に関する部分です。
ですからまず、相続や遺贈、死因贈与により取得した すべての財産を知る必要があります。
相続とは、被相続人の財産が相続人に引き継がれることを言います。
遺贈とは、遺言によって、遺言者の財産の全部または一部を贈与することを言います。
死因贈与とは、「私が死んだら、何々を誰々にあげる」という契約による贈与を言います。
『すべての財産』は、『本来の相続財産』と『みなし相続財産』に分けることができます。
『本来の相続財産』とは、
被相続人が亡くなった時点で所有していた、お金に換算できるものを言います。
(「換金」できるものではなく、「換算」できるものです。)
ですから、被相続人の現預金や不動産、宝石等の貴金属は、当然 本来の財産です。
また、借地権や電話加入権といった無形財産や、貸付金・未収金、
それに、子供の名義の預金ですが通帳・印鑑は被相続人が持っているというような
名義貸し預金なども、本来の財産に含まれます。
一方、『みなし相続財産』とは、亡くなった日には所有していないけれど、
被相続人が亡くなったことを原因として、相続人がもらえる財産等があります。
みなし相続財産には、
生命保険金、退職手当金等、生命保険契約に関する権利など13種類あります。
このみなし相続財産のうち、生命保険金等については次回、
退職手当金等については次々回、詳しく見てまいりましょう。
税率等は平成27年1月1日以降に適用となる、改正後の税率等です。
参考国税庁HP:
⇒ 相続税の計算
(国税庁HPは、改正後ではなく、現行制度の説明です。)
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