基礎から学ぼう、相続税
税理士・FP・行政書士
寺尾 省介
第2回 生命保険金も相続財産?
相続税が課される生命保険金
死亡保険と税金の関係について理解する際のキーポイントになるのが、
「被保険者」「保険料負担者」「保険金受取人」の3つです。
すなわち、
誰が亡くなった時にもらえるのか、誰がお金を払うのか、誰がお金を受け取るのか、
ということです。
A=被相続人、B=A以外の人、C=A,B以外の人 という前提で、
下の表を見ていきましょう。
まず、被相続人が被保険者の場合(①~⑤)、
その死亡保険金には、相続税、贈与税、所得税のいずれかが課税されます。
つまり、保険金がおりれば、何らかの税金が課されるということです。
それから、保険料負担者が被相続人の場合(①②⑥)、必ず相続税が課されます。
被相続人の財産から保険料が払われていたわけですから、
それによって支払われる保険金は被相続人の財産、というわけです。
⑥の場合、保険事故(Bの死亡)は生じていないので、保険契約は継続します。
しかし、保険契約を解約すれば解約返戻金がもどってきますし、
解約しなくても既払分の保険料は被相続人の財産から払われていますから、
生命保険契約に関する権利も相続税の対象になるわけです。
ただし、生命保険契約に関する権利は、保険金そのものではないため、
非課税部分はありません。
生命保険と非課税限度額
死亡保険金について相続税が課税される場合、
相続人が受け取った保険金には、非課税部分があります。※1
全ての相続人※2が受け取った保険金の合計額が非課税限度額を超える場合、
その超える場合が課税対象になります。
☆ 非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数※3
※1 法定相続人以外の人が取得した保険金には非課税の適用はありません。
※2 全ての相続人には、相続放棄した人や相続権を失った人は含まれません。
※3 法定相続人の数には、相続放棄した人や相続権を失った人も含まれます。
具体例で見てみましょう。
・法定相続人A 受取保険金額 1000万円
・法定相続人B 受取保険金額 500万円 (相続放棄)
・法定相続人C 受取保険金額 0万円 (養子)
・法定相続人D 受取保険金 0万円 (養子)
・孫 受取保険金額 100万円 (法定相続人でない)
受け取った保険金の合計額 1000万円+100万円(適用外)
※ 相続放棄をしたBの保険金は含まれない。
非課税限度額 500万円×3人(A.B,養子)=1500万円
※ 相続放棄をしたBも法定相続人の数に含まれる。
※ 法定相続人に含まれる養子の数は、実子がいる場合1人まで。実子がいない場合は2人まで。
課税対象額 1000万円-1500万円< 0円
0円+ 100万円=100万円
※ 法定相続人でない孫の受け取った保険金は、相続財産だが非課税の適用はない。
※ 法定相続人Bが受け取った500万円については、「みなし相続財産」だが、
法定相続人Bは相続放棄をしていることから非課税部分はない。
死亡保険金と遺産分割
相続税法上では、被相続人が保険料を負担していた保険金については、
課税の公平という観点から、みなし財産として相続税の課税対象に含むとしています。
一方で、この保険金は、民法上では、相続財産ではなく、受取人の財産です。
ですから、死亡保険金は遺産分割の対象にはならず、
受取人が相続を放棄したとしてもこの保険金は受け取れます。
また、保険契約上の受取人以外の人が保険金を受け取った場合、贈与税が課されます。
その人は保険契約上の受取人から贈与を受けたことになるためです。
たとえば、契約上の受取人である子の通帳に保険金が入金された後、
被相続人の奥さんとその子が協議をしてこの死亡保険金を折半することとした場合、
奥さんが子どもから受け取った金額に対して、贈与税が課されます。
ただし、分割協議書の中で、「代償財産としていくらを奥さんへ渡す」と明記されていれば
贈与税の課税なしに保険金相当額を奥さんへ委譲することができます。
次回は、生命保険金と同じくみなし相続財産で、非課税枠のある死亡退職金等について
見ていきましょう。
参考国税庁HP:
(国税庁HPは、改正後ではなく、現行制度の説明です。)
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