基礎から学ぼう、相続税
税理士・FP・行政書士
寺尾 省介
第3回 退職金も相続財産?
本来、相続財産というのは、亡くなった時に被相続人が所有していた財産をいいますから、
亡くなったことを原因として亡くなった後に支払われる退職手当金等は
相続財産ではありません。
しかし、相続税法上は、課税の公平の観点から、
死亡退職金手当金等をみなし相続財産として課税対象財産に含めることとしています。
この退職手当金等には、非課税部分があります。
その計算については、生命保険金と同様のため、第2回目「生命保険」を参照ください。
退職手当金等とは
退職手当金等は、退職手当金、功労金などがあげられます。
弔慰金については、明らかに退職手当金となるものを除き、
業務上死亡の場合は普通給与の3年分、それ以外の場合は普通給与の半年分を超えると
退職手当金等に含まれ、課税の対象になります。
また、雇用主が、従業員の配偶者等を被保険者とする生命保険契約や
従業員またはその配偶者等の財産に対する損害保険契約を締結していて、
その従業員が亡くなったために従業員の相続人などがその契約に関する権利を
取得したときは、この権利も退職手当金等に該当します。
相続税の課税対象となる退職手当金等
前述したとおり、退職手当金等は相続税の課税対象財産です。
しかし、いつまでも支給が確定しない退職手当金等を課税対象財産とすると、
いつまでも相続税額が確定せず、納税が不安定になるので、
亡くなられた後3年以内に支給額が確定した退職手当金等のみを
相続税の課税対象としています。
したがいまして、
実際に支給される時期が亡くなられた後3年以内であるかどうかは問題ではありません。
また、支給されることは確定していても、その額が確定しないものについては、
相続税の課税対象財産には該当しないこととなります。
なお、亡くなられた後3年経過後に支給額が確定した退職手当金等については、
その受取人の一時所得として、所得税が課税されます。
被相続人が生前に退職したための退職手当金等であっても、
その支給される額が被相続人の死亡後3年以内に確定した場合には、
みなし相続財産として相続税の対象になります。
なお、死亡後に確定した被相続人の賞与や、
支給期の到来していなかった俸給・給与については本来の相続財産であって、
非課税枠のある退職手当金等には含まれません。
相続税申告後に退職手当金等の支給額が確定した場合、
相続税の修正申告をすることになります。
次回は、相続税の課税遺産に含まれる贈与財産について見ていきましょう。
参考国税庁HP:
⇒相続税の対象になる死亡退職金
(国税庁HPは、改正後ではなく、現行制度の説明です。)
[次へ]