分割協議・遺言の大切さ
寺尾会計事務所
税理士 寺尾省介
この原稿は平成28年6月23日時点の法令によります。
第2回 未分割の場合の相続税申告・所得税申告
未分割での相続税申告
前回、財産が未分割の際には、共有状態がずっと続くとお話ししました。
では、未分割の際には、相続税の申告はいつどのようにするのかという疑問があります。
相続税上は未分割の状態でも10カ月以内に申告・納税する必要があります。
相続税の計算はいったん法定相続分で暫定計算をします。
その後分割が決まった場合には、
その分割割合で修正申告又は更正の請求をすることもできます。
未分割での相続税申告の問題点
遺産分割・遺言がないときの相続税申告では、納税資金の捻出がネックになってきます。
- 各種特例が適用できないため、一旦多額の相続税を納税しなければならない
- 遺産の預貯金が凍結しているので、納税資金に使えない
- 延納の担保に相続財産を充てられない
- 物納に相続財産を充てられない
結果、納税資金をどのように捻出するかというところが問題になってくるわけです。
ただし、届出をしておけば、
一定期間内(原則3年以内)に分割がまとまって更正の請求をする際に
特例が適用可能となります。(農地の納税猶予を除く)
当初申告時に既に納付した税の還付を受けることができます。
当初申告時には多額の納税資金を準備する必要があることと、
申告書を提出すると同時に届出を出すということがポイントです。
未分割での所得税申告
次に、所得税申告について、以下の事例を基にご説明します。
- 相続開始 2月1日
- 分割決定 11月1日
- 被相続人の生存していた期間にかかる所得については、
4カ月以内に、被相続人の所得として、相続人全員で確定申告します。
今回の事例ですと、1月1日~2月1日の所得を6月1日までに申告となります。
この確定申告を『準確定申告』『準確』といいます。 - 相続開始から分割決定までの期間にかかる所得については、原則として、
翌年3/15までに、各相続人の所得として、各相続人が法定相続分で確定申告します。
今回の事例ですと、2月2日~11月1日の所得を申告することになります。
年内に分割が決まった場合や、収入物件については取得者が決まっている場合には
簡便的にその取得者で確定申告をすることもあります。 - 分割決定からその年末までの期間にかかる所得については、
翌年3/15までに、その財産を取得した相続人の所得として確定申告します。
今回の事例ですと、11月2日~12月31日の所得を申告することになります。
なお、分割が決まるまでは、ずっと法定相続分で申告することになります。
第1回で「分割が決定すると所有者は相続開始時に遡る」とご説明しましたが、
収入は遡及しませんので、所得税の修正申告・更正の請求はできません。
[次へ]