M&Aによる事業承継を考えた会社のオーナー社長が知っておくべきこと
経営コンサルタント 兼
製造業および小売店舗オーナー
中沢光昭
第5回 相手探しはいつから始めるか?
会社をM&Aで売却しようとした場合には、早めに検討を始めるに越したことはありません。
筆者は、仮に子息などに後継者が決まっていたとしても、
オーナー社長が高齢を感じたら、売却による事業承継を1回は考えて損はないと思います。
早く動くに越したことはない
事業承継に関わらず、会社をM&Aで売却しようとした場合には、
早めに検討を始めるに越したことはありません。
費用が大きくかからない範囲で早め早めに進めておけば、
途中で何かしっくりこないことがあったらいつでも、躊躇なく止められるでしょう。
不動産取引と同じで、焦るほど良い結果は生まれないものです。
時間かけて検討した結果なにがしかの理由で話が流れてしまったら、
その反省を生かして仲介会社を変えてチャレンジすればいいだけのことです。
何と言っても、早く検討することで、買い手をじっくり選べることはメリットでしょう。
早期検討の副産物
また、稀にではありますが、
親が本気で外部に会社の引き取り手を探していると知った自分の子供が、
「だったら俺が継ぐ」と言って外から戻ってくるようなことがあります。
親としては泣いて喜んでいましたが、
具体的に交渉もしていた買い手にとっては「勘弁してよ…」というところです。
ただ、事情が事情だけに納得がいくものです(実はこの買い手は筆者でした)。
そうした不測の事態が起こっても、
早めに動いていたこの会社では、じっくりと引継ぎプランも実行できたことでしょう。
これは親族の例ですが、身売りの動きを察知したら急に中堅社員が一致団結し始め、
「だったら俺たちで出し合うので買い取らせてください!」と、
モチベーション高く言い出すかもしれません。
事業承継・売却の検討のきっかけ
「創業者の体の具合が悪くなった」
「業績の見通しが立ちにくくなった」
「後継者候補がいたが、見切りをつけた(出て行った)」など、
負の事情を抱えた売却希望の会社を見かけることがあります。
残念ながらそうした事情から売却検討を始めても、理想的な形にはなりにくいです。
目先の選択肢にすがるしかないという状況にもなりかねません。
保険のCMではありませんが、何か起こる前に準備しておくことが重要です。
筆者は、仮に子息などに後継者が決まっていたとしても、
オーナー社長が高齢を感じたら、売却による事業承継を1回は考えて損はないと思います。
意外な販路のシナジーがある会社に出会い、株の3分の2を子息に持たせつつ、
3分の1は協業できる他社に売却するなど、色々な選択肢が浮かぶ可能性があります。
あるいは、「やっぱり子息に継がせるのが一番」と、親子で再確認できてもメリットでしょう。
仲介会社は嫌がるかもしれませんが、そのリスクを承知で高い成功報酬を取っています。
幅広い選択肢を早めに、継続的に探すことが賢明でしょう。
何にせよ、善は急げです。
(つづく)
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