韓国進出・海外ビジネスのポイント
PRコンサルタント
佐々木 和義
第3回 進出形態2「相手主導の合弁会社」
海外への進出形態は、①代理店等への販売、②業務提携、③合弁会社の設立、
④全額出資による子会社や支店に分かれます。
今回は、③合弁会社の設立のうち、相手が主導するケース、すなわち、
少数出資・対等出資の場合のメリット・デメリットについてご紹介します。
合弁企業 - マイノリティ出資
韓国に進出して40年になる乳酸菌飲料メーカーがあります。
進出当時は出資制限があり、出資比率40%未満のマイノリティ(少数株主)として、
製造も販売も現地主導となる合弁企業を設立しました。
(いまの韓国では外国からの出資制限はなく、独資も可能です。)
このメーカーは日本で培った手法を参考に、現地の実情に合わせてアレンジした販売手法で
成功を収め、いまや、すっかり定着しています。
また、同じくマイノリティ出資で合弁を設立したカレーチェーンは、
日本から輸入したカレールーを合弁相手のセントラルキッチンで調製して、
直営店やFC店に供給しています。
日本企業が10%から40%程度の少数株主として設立する合弁会社は、
日本ブランドの製造あるいは販売が主目的です。
販売収益は合弁相手に帰属することもあって、合弁相手も積極的な事業活動を行います。
製造や販売なライセンスは、この合弁企業に対して供与しますので、
仮に合弁を解消すれば、技術も販売権も日本企業に戻ります。
このマイノリティ出資による進出は、事業資金や人材から販売ルートなどを
合弁相手に委ねることになるので、事業の成否は相手次第ともいえます。
現地主導によって、現地に根付いた展開で大きく伸びているメーカーが多いなか、
資金力がない相手と合弁会社を設立して、伸び悩んでいる会社もあります。
時には、相手先からの一方的な合弁解消の申し入れで、
全株式を取得して継続するか、あるいは撤退するか、選択を迫られるケースもあります。
パートナー候補の定量情報や定性情報を十分に調べて、見極めることが大切です。
合弁企業 - 対等出資
韓国では、サムスン、LG、現代など、大手グローバル企業と日本企業の
合弁工場が少なくありません。
外国人投資促進地域に外国からの出資が過半数を超えている企業が、
工場等の事業所をつくると税制優遇を受けられる制度があります。
そこで、実情は韓国企業主導でも、登記上は日本側50%超の合弁企業を設立して
工場を建設することもよくあります。
マイノリティ出資と同じく、多くを相手方に委ねることになります。
相手は大企業なので、資金の枯渇はありませんが、
合弁相手の事業分野からの撤退など、合弁解消の申し入れがなされると、
日本側としては受け入れざるを得なく、
場合によっては、工場ごと買い取ることにもなりかねません。
また、名実ともに40~60%程度となる対等出資による合弁は、
権限が曖昧になる危険を孕んでいます。
某日系外食企業は、日本側は食材を担い、韓国側は店舗運営を担う契約で、
その範囲と権限を明確に分けています。
日本の基準で製造した商品を供給し、店舗展開は資金も含めて相手が責任をもちます。
一見、良さそうにみえますが、直営店はもとより、FC等の店舗に対しても、
指導を含む一切の口出しができず、売上げが伸び悩んでいます。
対等出資による合弁は、権限が曖昧のままだと、どちらが主導権を持つかはっきりせず、
権限の範囲を明確に分けてしまうと相手側の権限に口出しができません。
最も運営が難しい進出形態であり、リスクも最も高い進出形態かもしれません。
次回は、海外への進出形態のうち、
日本側主導となる合弁会社と全額出資の子会社・支店についてご紹介します。
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