ASEAN経済共同体とタイ進出の基礎知識
ASEAN JAPAN CONSULTING 株式会社(日本法人)
Kaigai Advisory Co.,Ltd..(タイ法人)
代表取締役 阿部俊之
第2回 タイの位置づけと日系企業における進出方法
前回の記事では、AECの概要、人口規模、年齢層などからの順位を解説した。
今回は一人当たりGDPを挙げてタイの位置づけと、
実際の日系企業の進出事例を解説していく。
まずは各国の中間層がどのレベルであるのか、
(例:一人当たりGDP3000USドル→自動車購入レベルになるなど)
資源やエネルギーはあるのか、長期的な成長&開発ストーリーがあるのか、
基幹産業があるのか、など様々な角度から、市場や産業構造を分析する必要がある。
一人当たりGDPとタイ
タイは既に5000ドルを突破し、
自動車、携帯電話、インターネット普及率も大きく伸びている。
この規模は過去の日本の1980年代の手前まで来ていて、
今後1万ドルまで『中進国の罠』に陥らなければ、
国民の所得水準も大きく伸びることが予想されている。
タイに進出している日系企業
既にタイ国内には、大戸屋、やよい軒、モスバーガー、ココ壱番などの大手日系飲食店
多数の有名ラーメン店が続々と進出。
JETROの調査統計では2000店舗以上がタイの飲食市場へ参入をしている。
またインターネットでは楽天、GMO、アパレルではユニクロ、
薬局チェーンではツルハ、コンビニではLAWSON、など
サービス系の日系企業も続々と進出を決定している。
これらの日系企業はどのように進出を果たしているのだろうか。
日系企業がタイへ進出する方法
タイには大きく分けて進出方法が3つほどある。
1 駐在員事務所
営業活動はできず、情報収集などに限定される。
ここ最近は地銀・信金による駐在員事務所設立の進出が多くなっている。
一般的な企業には向かない。
2 現地法人設立(タイ資本パートナーとの合弁)
外国人事業法により、タイ資本が過半数を保有する合弁でなければ許可されない業種と、
外資比率が過半数を保有できる業種がある。
製造業の場合は原則として独資での進出が可能。
3 現地法人設立(独資での会社設立)
非製造業(卸売業、小売業、サービス業、メンテナンス業など)の場合は、
外国人事業法により合弁(タイ資本51%以上)が条件となる。
例外としてタイ投資委員会(BOI)による投資認可事業では
同委員会の認可により設立が可能になる。
この他にも日本人を一人雇用するために資本金を200万バーツ必要としたり、
タイ人の社会保険加入者4名を揃える必要があるなど、
設立から実際の事業の稼働までは幾つかのステップと進むべきプロセスがあり、
複雑な印象がある。
ただし、タイは親日国であり、合弁先からの急な条件変更、大きな裏切りや、
政治の介入などは比較的少ないという特徴を備えている。
日系企業がタイへ進出した事例
- 2012年に信金中央金庫は、バンコクに駐在員事務所を開設。
取引先の東南アジアへの進出が加速していることから支援体制を強化するため設立。 - コンビニ大手のLAWSONは
2012年タイの大手財閥サハ・グループと合弁を組み進出を決定。
Saha Lawson,Co.,Ltdを設立しコンビニエンスストアの拡大を進めている。 - 楽天は2007年に現地のタイ企業であったTarad.com社を買収。
BOI企業認可を取得し株式の過半数を取得している(残り分は創業者が保有)。
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