ASEAN経済共同体とタイ進出の基礎知識
ASEAN JAPAN CONSULTING 株式会社(日本法人)
Kaigai Advisory Co.,Ltd..(タイ法人)
代表取締役 阿部俊之
第3回 タイの大手財閥の種類と特徴 ~大手財閥、農業・食品・金融分野~
前回の記事ではタイの位置づけと日系企業における進出方法を解説した。
今回はまず一般的に知られているタイの財閥・長命な富豪などを解説していく。
前回の記事の通り、
進出にあたり、現地企業との資本協力や合弁などが必要になることが非常に多い。
そして現地企業はたとえ財閥・大手だろうと、
「自分達が持っていない、日本の高品質な技術・サービス・ノウハウ」を求めている。
日本の中小企業の「技術・サービス・ノウハウ」と
現地財閥・大手の「人脈・ネットワーク・市場開拓」の組み合わせができることによって、
新しい、大きな市場を拓くことが可能になっていく。
まずは少しでも相手を知ることで、真剣に進出を考える足掛かりができるだろう。
タイには大きく分けると、財閥は2つある。
「華僑系の財閥」→ 中国からの移民。
既にタイに溶け込んでいて金融や小売り、不動産などで活躍している。
「王室系の財閥」→ 王室財産管理局が展開する事業、銀行、不動産、建設素材などでも
タイ証券取引所に上場する企業も存在。
この他にも「タイ地場系の財閥」や「インド系の財閥」も存在する。
(表示する為替レート換算は2015年7月時点1バーツ=3.6円で計算)
<1>タイの食品財閥最大手 CPグループ チャロンポカパーン・グループ
タイ国内における最大の食品企業。
チャロンポカパーンフーズ(CPF)は農業分野の旗艦企業。
2014年度売上4383億バーツ(1兆5778億円規模)。
同グループは家畜用飼料の製造業者として設立。
多角化を進めエビの養殖・販売や鶏肉の生産・加工・販売なども取り扱いを始める。
農業分野以外に食料品の分野を中核事業として、
通信分野TRUE Group、不動産分野CP Land、コンビニ分野CPALLなどに進出し、
全部で8つの分野で事業を展開している。
国際的には、ASEAN各国や中国などを中心に世界13カ国に進出している。
<2> タイのツナ缶財閥大手 タイ・ユニオン・フローズンプロダクツ(TUF)
タイを拠点に欧米・アジアに工場を持つ水産加工の大手企業。
2014年の売上高は1228億バーツ(4420億円規模)。
代表者はティラポン・チャンシリー氏。
創業者は華人出身のグライソーン・チャンシリー氏で、1977年創業。
小さなエビ生産工場から始まり、欧米企業向けのM&Aを繰り返し、急成長を果たす。
<3> タイのビール財閥大手 TCC グループ
タイの富豪、ジャルーン・シリワタナパクディー氏が率いるコングロマリット。
1944年、バンコクの中華街生まれの中国系タイ人。
酒造業に参入して、蒸留酒、ビール、不動産、金融、消費財などを手がける巨大財閥を
一代で築いた。
タイのアルコール飲料最大手 タイビバレッジ(THBVE) →シンガポール上場企業
不動産大手TCCランド → (未上場)、
消費財大手ベーリユッカー(BJC) → タイ上場企業
コーラ生産・流通スームサック(SSC) → タイ上場企業
緑茶・日本食チェーン大手オイシ(OISH) → タイ上場企業 などの大手を傘下に収める。
<4> タイの消費財財閥大手 サハ・グループ
1942年に創業者のティアム・チョクワタナー(ThiamChokwatana)が立ち上げた
消費財企業グループ。
現在はタイ国内を中心に300以上の関連会社を抱える。
主な企業は、持株会社であるSAHA PATHANA INTER-HOLDING (SPI)や
消費財を扱うSAHA PATHANAPIBUL (SPC)となっている。
2012年度SPCの売上は270億バーツ(750億円)。
タイ国内において日本企業との合弁を積極的に進めていて、
主な合弁相手としては
ワコール、イトキン、ライオン、資生堂、ツルハ、ダイソー、早稲田大学、文化服飾学園
など、消費財、ファッションや化粧品・ドラッグストア関連企業が多い。
<5> タイの金融大手 バンコク銀行・グループバンコク銀行(BBL)
タイ国内大手銀行で資本金規模第1位の銀行。
日本では東京・大阪にも支店を持つ。
オーナーのソーポンパニット(陳)財閥は
タイの大手商工業の分野で広範囲な企業の株式を保有している。
2014年度末総資産額は2兆7598 億バーツ (およそ9兆9352億円) 。
フルバンキングサービスを提供していて、投資、保険、預貯金すべてを取扱っており、
インターネットバンキングサービスも導入している。
また、タイで資本金規模第3位のカシコーン銀行は、
最近では日系企業・日本の地方銀行との取引も積極的に開始している。
そして、第5位のアユタヤ銀行は2013年に三菱東京UFJ銀行が買収をしている。
次回は工業系、不動産系、建設系を解説していく。
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