次世代経営者へのバトンの渡し方
WITH株式会社 代表取締役
佐々木啓治
第3回 戦略・戦術の体感共有の仕方
前回
「ビジョンを達成するための戦略や戦術を自分達で考え、体感し、発表してもらうことで
社員の理解が深まり、正しく遂行できる組織になる」とお伝えしました。
では実際に社員全員に戦略、そして戦術を考えてもらうのですが、
いきなり何もなく社員に考えてもらうと
経営者としてはため息が出るようなものが出来上がる可能性が高いです。
「社員に考えさせるなんて、そんなの無理ですよ。」とおっしゃる経営者も多いです。
それは、経営者は色々な勉強をして、
様々な事案を考慮して必死に戦略や戦術を考えてきた素地がありますが、
社員にはそれがないからです。
社員に考えもてらう上で重要なことは、
「考える物差し」を与えて考える基準をつくってから考えてもらうことです。
これによって経営者との思考のギャップは大きく解消されます。
「考える物差し」オープンブック・マネジメント
それでは具体的に考える物差しの例をみていきましょう。
まず、有名なのはオープンブック・マネジメントです。
アメリカの自動車部品会社のSRCという会社がオープンブック・マネジメントを初めて
導入した会社なのですが、
導入から15年で売上が10倍になった、という成果を残して有名になった手法です。
どういった手法かを大きくまとめると、
- 社員に財務諸表(貸借対照表・損益計算書)の読み方を教育する。
- 会社の財務諸表のデータを公開して、社員がアクセスできるようにする。
※ 公開 = オープンブック - 現場のグループ単位で予算と成果を比較して、
グループの社員たちで事業戦略(仕事の効率的なやり方)を工夫していく。 - 会社の売上目標達成に対するボーナスに加えて社員が自社の株を保有できる
ストックオプション制度でオーナーシップ意識を高める。
という形です。
最後のストックオプション制度などは、まさにアメリカの企業文化を表しています。
ただ、これは全社としての価値観やビジョン、戦略などを理解する上で
効果的な手法の1つではありますが、企業によってはおススメできない場合もあります。
そもそも財務諸表を公開することに関して抵抗やリスクのある会社も多いのではないでしょうか。
効果的な手法ではありますが、
日本の企業で、しかも中小企業の場合は「諸刃の剣」になる可能性もあるので、
導入の際には慎重に検討する必要があります。
「考える物差し」経営フレームワーク
では、もう1つの手法をお伝えします。
それは「経営フレームワーク」を使用することです。
有名どころでは「PDCAサイクル」や「ブルーオーシャン戦略」などです。
これらに関しては本なども出ているので一度は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
こういったフレームワークを使用することで考える物差しと基準が明確になるので、
非常に有効ですし、何よりオープンブック・マネジメントとは違い、
実施することにリスクがありません。
具体的には、次のようなものがあります。
●事業の方向性を決めるフレームワーク
- アンゾフの戦略マトリクス
- PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)
- GEのビジネススクリーン
●事業戦略立案のフレームワーク
- SWOT分析
- 3C
- プロダクトライフサイクル
●内部資源分析のフレームワーク
- 7S
- バリューチェーン
●業界構造分析のフレームワーク
- 5つの力
- 戦略ポジショニングの分析
全てを実施するのではなく、
自社のビジョン戦略や戦術を考える上でどのフレームワークが有効かを選択して
使いましょう。
横文字が多く、タイトルを見ただけで気が滅入る経営者もいらっしゃいますが、
実際内容を見ると至って分かりやすくシンプルで、
考える物差しとしては非常に効果があります。
ぜひこのフレームワークを使用して、
ビジョン・戦略・戦術の「全社体感理解」を目指しましょう。
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