事業承継におけるM&Aの活用

株式会社キャピタル・ソリューション・ビジネス
加納 芳邦

掲載日:平成31年3月1日

第1回 なぜ、後継者問題が起きているのか

最近、中小企業の事業承継について、

よく新聞やインターネットニュースで目にすると思います。

中小企業庁でも支援や税制優遇を行っていることを考えると、

それだけ深刻な問題になっているといえます。

 

帝国データバンクの「全国社長年齢分析(2018)」ならびに

「全国『休廃業・解散』動向調査(2018)」によれば、

社長の平均年齢は59.5歳と過去最高を更新し、70歳代が最も多いと出ています。

 

特に中小・零細企業の社長の高齢化が深刻化しており、事業継続を断念し、

「休廃業・解散」を選択する企業の倒産が増えています。

 

社長が高齢になっても交代が進まないのは、後継者がいないことが要因の一つです。

 

なぜ、後継者問題が起きているのでしょうか。

 

経営の問題

会社の売上の減少等により、子供がいても後を継がせたくないと考える経営者もいます。

事業の将来性を考えて、事業を承継させずに廃業してしまうケースがあります。

 

人材不足の問題

子供や従業員に経営者としての素質の問題で、継がせたくないという場合があります。

また、私が関わったケースでも、

親(社長)が思うほど、子供(後継者)が、その事業に思い入れがない場合も多々あります。

 

その場合、無理やり会社を継がせても、

将来的に会社の継続の雲行きが怪しくなる可能性が高くなります。

 

昔でしたら、子供も親戚も人数が多かったので、

そうなった場合、他の身内の者に継がせることもできました。

しかし、今はそういう訳にはいきません。

ご存知のとおり、日本の人口は減少する一方で、

後継者を必要としていても引き継ぐ人材がいないのです。

 

また、よくある話ですが、
大塚家具のように時代と共に親子それぞれの感覚、認識のズレが出てきてしまい、

考え方が違うため経営方針等で揉めてしまい、承継させないということもあります。

 

他にも、現社長の功績が大きいほど、

次期社長(子供や従業員等)に対する周囲の期待感や比較感も出るため、

承継者がそのプレッシャーに耐えられないなど、様々な問題が出てきます。

 

株式承継の問題

さらに、会社を承継する場合、株式をどう承継するかという問題があります。

 

たいていの中小企業は、社長が大半の株式を保有しています。

ですから、経営権を持とうとすると

次期社長は会社を承継する際にその株式を買い取らなくてはなりません。

 

株式を購入する資金をすぐに出せるとよいのですが、

銀行等より調達しないといけない場合は、借入のリスクも負うことになります。

 

個人保証の問題

また、会社が銀行等から借入をしている場合、

社長が個人保証をしていることが多数だと思います。

 

この個人保証ですが、金融庁の調査の結果、

事業承継が行われた企業に対して、銀行が前社長に対する融資の個人保証を解除せず、

次期社長にも個人保証をする、つまり、二重に個人保証をとっているケースが

約4割弱もあることが判明しました。

 

子供や従業員等が会社を引き継ぐ際、承継者が個人保証を引き継いだ上に

前社長の個人保証もそのままになることがあるということです。

こうなると、譲り渡した事業がうまく進まなくなった場合、

引退したはずの前社長に借入だけが残ることも起こりえます

 

そのため従業員が承継者となる場合には、前社長の家族の承諾も得なくてはなりません。

 

多面的な事業承継の問題

このように会社を継がせるということは、簡単にはいきません。

 

円滑かつ円満に後継者に会社を継がせるためには、社長としての教育の他にも

資金面でファンドの活用など、ありとあらゆることを考えて、周到な準備が必要です。

また、会社の事業だけでなく、

起業からの歴史、従業員、これまでの経営、地域との関わりあい、

全てを含めて後世に残していくことが、社会的、経済的に貢献することになります。

 

子供や従業員に会社を継がすための取り組みを早くからしているとよいのですが、

中小企業の場合、日々の業務に追われ、そのような時間と費用をかけられないことが

大多数であると思います。

 

円滑かつ円満に後継者に会社を継がせるために

どのようにすれば、M&Aを活用して、後継者問題を解決していけるのかを

次回から述べたいと思います。

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