事業承継におけるM&Aの活用
株式会社キャピタル・ソリューション・ビジネス
加納 芳邦
掲載日:平成31年3月13日
第2回 事業承継のためのM&A
では、円滑かつ円満な事業承継のためにM&Aはどのように活用できるのでしょうか。
その話を始める前にM&Aについて、簡単なご説明をします。
M&Aとは
Merger & Acquisitionの略で、企業の合併・買収を意味しています。
広義の意味でのM&Aは、資金調達、株式譲渡、株式交換、業務提携なども含みます。
事業承継を考えた場合のM&Aには、
主に株式を譲渡する方法と事業を譲渡する方法の2つがあります。
株式譲渡とは、現株主が保有している株式を相手に売却するものです。
この場合、株主は変更されますが、資産や従業員の雇用等はそのまま変わりません。
事業譲渡とは、事業の全部または一部を売却するものです。
この場合、事業を運営する会社そのものが変わるため、これまで締結してきた契約書
(従業員との雇用も含めて)を全て再契約することも必要となります。
M&Aで生じる金銭と税金
事業承継を考える上で、株主に入るお金も切り離せない問題になります。
多くの場合、中小企業の株主は社長です。
ですから、株式譲渡によるM&Aの場合、社長に株式譲渡代金が入ります。
そのため株主(社長)は、その資金を個人として、その後に充てることができます。
株式譲渡代金は所得税のキャピタルゲイン課税の対象となります。
税率は基本的には譲渡した株式の利益の20%ですから、
他の所得に比べて低い税率での課税となることも多いでしょう。
一方、事業を譲渡する場合、会社に事業の譲渡代金が入ります。
この場合は株主個人には直接売却代金は入らず、法人に入りますから、
利益に対する法人税への配慮なども必要になります。
そこから給与所得などで社長が得る場合も、税率などを考慮しなければなりません。
M&Aの例
2つのM&Aをご理解いただけたところで、本題に戻りましょう。
円滑かつ円満な事業承継のためにM&Aはどのように活用できるのでしょうか。
例えば免許を伴うような業種の場合です。
新会社を設立するのではなく、免許を持っている会社をM&Aにより購入し活用して
自社をさらに発展させたいと考える買い手もあります。
また、
M&Aを行って、経営権を買手先に移した上で
元の会社の事業を軸に事業を行う可能性も十分あります。
特に同業他社に譲渡する場合ですと、会社の事業をそのまま引き継いでもらうことも
できます。
その例で、同業他社に株式を譲渡したケースもありました。
こちらは、営業も従業員もそのまま買手先に引き継いでもらえ、
同業者であることで風評被害も出ない、スムーズな株式譲渡のM&Aになりました。
また、この場合、規模の大きい会社とのM&Aであったため、
現在の事業以外にも新規に事業ができる可能性も出てきました。
それから、負債があった会社を
資産と営業(免許事業)とに分ける形で、会社分割をしたこともあります。
資産の方の会社は残務整理のため、税務署や金融機関等の対応を行いました。
そして、営業の方の部分を次の後継者に承継しました。
こちらは、新たに投資、融資等での資金を集めて、新会社として動き出すことができました。
今回ご紹介した形のほかにも、売り手と買い手の会社の希望に合わせて
M&Aによる事業承継は様々な活用と可能性が考えられます。
次回は、実際にM&Aのメリットとデメリットについて述べたいと思います。
[次へ]